こんにちは、アジヘルさんです。
おまたせ致しました! おそらく年内最後のヘルステック業界ニュースをお届けします。
いま見返してみると、アジヘルブログをスタートしたのが2015年12月19日なので、なんと5周年突破しました!!継続と習慣化こそ自身のコアスキルだと思っているので、これはひとつの自信に繋がりますね。 いつも読んでくださってる皆様、ありがとうございます!
最初のアジヘルブログとかまじでなつかしい・・・
さて、前回のエムスリー記事に続き、本記事では米国のヘルスケア企業を紹介致します。
最近注力のLivongo, Amwellにつづき同じく米国サンフランシスコ創業の1 Life Healthcare (One Medical)です!
新型コロナの流行がまだ収束を見せない中前回まではオンライン診療サービス企業を中心に紹介してきましたが、今回は少し毛色が異なります。1 Life Healthcareは、2007年創業の会員向けのプライマリ・ケアのコンシェルジュサービスを提供しています。
One Medicalの事業概要
診療プロセス及び診療記録管理プラットフォーム
直営のプライマリ・ケア診療所
新型コロナ対応
幅広いサービスを提供
資金調達状況
絶好調の第三四半期決算
第四四半期に向けての展望
事業概要
さて、プライマリ・ケアのコンシェルジュサービスとはなんぞや、という話について説明します。
まずプライマリ・ケアとは、患者の身近にあり、健康に関する相談を気軽にできる総合診療を提供するサービスのこと、即ち日本で言うかかりつけ医ですね。
米国の医療保険に加入する際は必ずプライマリ・ケア医を指定する必要が有りますし、医師総数の約3分の1がプライマリ・ケア医である等、米国の医療にとってプライマリ・ケアは欠かせない存在です。 一方で、プライマリ・ケアを施す現場はまだまだアナログでの患者情報管理や経営管理が主流で、無駄が多いという課題がありました。
その課題に取り組むべく設立されたのが、One Medicalです。(https://jp.techcrunch.com/2011/09/06/20110905one-medical-raises-20-million/)
One Medicalは、全米に90以上のクリニックを持っています。会員であれば、24時間いつでもどこでも受診できる等、特定のプライマリ・ケア医を決め、事前予約が必要な場合が大半な従来の状況からすると、患者にとって大変便利なサービスです。
▼One Medicalのクリニック。とてもスタイリッシュ!
診療プロセス及び診療記録管理プラットフォーム
患者側では診療予約や処方箋申込、検査結果の取得や診療履歴の閲覧等、医師側では診療記録へのアクセスがすべてオンライン上で可能です。また、患者が複数の診療所に行った場合も、診療記録は一貫して閲覧可能です。
初診受付や会計等もオンラインで実行可能で、この効果は、如実に数字となって現れています。(通常のプライマリ・ケア診療所では医師1名あたり3−5人のスタッフが必要な所、同社では1.5人程度で済んでいます)また、精神疾患を含む諸症状で対面での診療が不要な場合、会員であればオンラインでの相談や診療、コーチングも受けられます。(https://www.onemedical.com/services/mindset/)
▼患者用One Medical アプリ
直営のプライマリ・ケア診療所
こちらにあるように、米国内ですでに90以上の診療所を運営しており、中にはGoogle社のように、オフィス内に診療所を設置することもあるようです。
会員は、個人の場合年間199ドル、法人の場合は法人規模に応じた割引価格で、24時間いつでも米国中の診療所を利用可能です。
患者側にとっては勿論のこと、医師側でも診療できる患者数が管理されており、勤務過多を防ぐことができるメリットがあります。
このように、クリニックのオペレーション効率化、顧客管理のオンラインプラットフォームと診療所とを組み合わせたビジネスモデルがOne Medicalの特徴ですが、日本国内だとLinc’well(リンクウェル)が非常に似た形で事業を展開しています。 現在は田町駅直結で、予約〜会計までオンラインで簡潔するクリニックを運営しており、近々都内に追加で数カ所展開する予定とのことです。
ここまで、One Medical のサービスを紹介してきました。クリニックといえば、新型コロナ蔓延による受診の差し控えにより、日本の多くのクリニックが経営難に陥っています。
プライマリ・ケア専門のOne Medical のクリニックは、果たして新型コロナに対してどう対応しているのでしょうか。
新型コロナ対応
米国は、未だ世界一の感染者数を保持しており、感染は今年4月のニューヨークやカリフォルニアといった大都市部だけでなく、中西部にも広がっています。One Medicalは、会員向けに新型コロナから身を守るための生活上のアドバイスや従業員の健康管理、PCR検査等、感染予防から感染後のフォローまで一貫してサービスを提供しています。
幅広いサービスを提供
One Medicalでは、その他特筆すべきサービスとして、不眠症やアルコール中毒、その他精神疾患のケア、乳児からティーンまでの子供向けの24時間ケアサービスも展開しています。
精神疾患のケアという観点では、モバイルアプリやデバイスを通じて高血圧、糖尿病患者のケアを行うLivongoがありますが、リアルな診療所を持つというのがOne Medicalの強みだと思います。
資金調達状況
さて、ここまで事業概要を書いてきましたが、ここでは2007年の創業以来の資金調達について説明します。
前の記事で紹介した遠隔診療大手Amwellが、上場後5月の資金調達で約1.9億ドルの調達している一方、One Medicalは今までに5.3億円以上という多額の資金調達を行っています。
また、資金調達先が、世界的な投資ファンドであるCarlyle GroupやJ.P.Morgan、Googleの持株会社であるAlphabet等錚々たる企業が名を連ねています。
第三四半期決算
9月30日を持って第三四半期が終わり、11月初旬に四半期決算が発表されました。
売上高は第三四半期だけで$101.7M、約1億ドルの大台を突破して前期同期比46%増加、時価総額は12月初頭現在47億ドル前後となっています。
こちらによると、2018年度の年初から9ヶ月の売上は$154.6M、2019年の同時期は$198.9Mです。同社CEOのAmir Dan Rubinも「たった1四半期で$100Mを突破したのは初めて」と決算発表で述べているように新型コロナ発生後売上は急増しているようです。
この背景としては、新型コロナの流行によって医療機関へのアクセスが難しくなった(通常の予約が取りづらい、一方で医療機関での感染を恐れ対面診療も差し控えたい)ことにより、オンラインでの診療も受け付けるOne Medical が魅力的に映り、下記記載にあるように会員が増えたことが主要因として考えられます。
会員数は前年同期比29%増の51万余りを記録しています。実診療所を持たないオンライン診療大手のTeladocの有料会員3,670万余りと比べると少ないですが、順調に増加しています。
株価についても、上場当時約22ドルだったのが、5月、7月中旬の約40ドルの高値を記録するも、その後は30ドル前後で安定し、直近12月初頭は34ドルを記録しています。
5月の高騰の要因としては、19日に発表があった、10x Genomicsとの提携によるCOVID-19検査、オンラインでの従業員の症状スクリーニングサービス開始が考えられます。7月にはOne Medicalからそれらしき発表はありませんでした。
一方で、対新型コロナワクチン開発で著名な米モデルナが第3相試験の開始を発表したのがこの頃だったり、22日に米国保健福祉省、国防総省が、新型コロナワクチンの大量生産及び配送においてファイザー社と合意をするなど、新型コロナワクチン開発への期待の高まりも一因ではと考えます。
第四四半期に向けての展望
最後に、次四半期の業績予想ですが、会員数は53−4万、純利益も$104-109Mと凡そ当期比5−6%の成長を見込んでいます。
新型コロナ下にあって多数企業がひしめく遠隔診療業界にあって、随一実診療所を持ち、必要があれば何時でも対面での診療を受けられるという安心感を提供するOne Medical の今後を、引き続きウォッチしていきます。
ヘルステック業界最新ニュース10月号まとめ
⇒エムスリー編:時価総額6兆円突破!LINEドクターxデジカルがもたらす医療のロケーション変化とは
⇒One Medical編:米国のプライマリ・ケア業界革命児 One Medicalをウォッチ開始! (本記事)
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