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2023年振り返りと映画ベスト:映画史と個人史のあいだで

筆が遅く、年初からハードモードに仕事をしていたら、2024年も気づいたら1ヶ月以上経ってしまいました。 

以前のブログから含めると、もう10年以上も続けている毎年恒例となっている2023年の振り返りと映画ベスト10です。 

 

年末年始は、毎年年越しをしている金沢で今年も過ごしたのですが、 まさに1/1も金沢におり、突如緊急地震速報が鳴り響き、大きな揺れにあい、直後に津波警報も出たためショッピングモールの3階に避難する、という経験をしました。 

 

この文章を書き始めた1/2にホテルでUNEXTで紅白をみていたら、なんだか急に落ち着いてきたようで、ひとりでぐっと泣けてきてしまいました。 

2日間、めちゃくちゃ緊張して、大変気を張っていたのだなとおもいます。 

同時に直接自身が体験していないとどうしても忘れていく感覚というものがあるのだな、という感触をあらためて強く持ちました。 

 

自分の友人・知り合いはそこまでの大きな被害はなかったようですが、まだ珠洲や輪島などの大変な状況が続きます。 早くみなさまに平穏な時間が戻ってくるように、祈っています。

 

2023年振り返り

さて気を入れ替えて、まずは2023年の振り返りからいってみましょう。

 

まず仕事面です。 

アイリスはスタートアップW杯世界優勝や、グッドデザイン賞金賞受賞といったビッグニュースが続き、会社の認知のステージが変わった気がしています。 

 

創業期に、4-5人でコワーキングでやっていた頃とは全く違う頃を思い出すと、想像もできないところまできたなと思います。 

最初は(特に僕の周りの事業家からは)ほとんど共感を得られなかった事業・サービスが、今ではすごいものをつくったね/すごいことになっているねと多くの人がポジティブに言ってくれるようになりました。 

 

あと、今はもう懐かしい話になっていますが、2023年年初、新聞でがっつり自分自身の特集されたこととか、そんな日が来ることも想像していませんでした。 

僕自身、世界や自身の未来に対するポジティブな確信は強いものの、未来を意図的に設計する思考はそこまで強くないのだろうと思います。

ふとたまに、自分の人生がこんな風になるとは想像もしていなかったなあと驚き、楽しみに生きています。

2023年、特に思い出に残っている仕事としては2つあって、ひとつはnodocaのグッドデザイン賞の金賞受賞です。

この賞をとるために、7月の1ヶ月間はすべてを捧げた、といってもいっても過言ではないくらい、やりきった仕事でした。ほとんど毎日朝から夜は日付を越えるまでどうしたらこの賞をとれるかを考えていました。

内容も、プロダクトが起点となって変える社会のデザインといった超抽象から、
1mmでも展示パネルのサイズがオーバーになったら失格になる超具体までを行き来する仕事でした。

ここまで本気になって取り組むきっかけのひとつは、社内の尊敬する友人から、言われた言葉でした。

「このくらいでいいか」と手を抜くような仕事の仕方をするな。

今の田中さんは、忙しさを言い訳に、過去の経験や知識で「それなりの仕事」をこなしているように見える。

自分に甘え、死ぬ気でやることを忘れると、本当に立ち上がるべきときに、立ち上がれなくなるぞ。

もちろん言われた瞬間のモヤりはありましたが、
自分にも他人にも厳しい彼だから出てくる言葉だったし、彼からこう言ってもらえることも感謝ですし、その言葉は今でもずっと残っています。

そこから死ぬ気でやる感覚を思い出しましたし、その過程は大変でしたが、振り返ると一番よかったなと思い出になっています。

また、アイリスで新規事業部門を立ち上げ、本格的にnodocaの次の事業を作る、ということを自身のミッションに設定しました。 

事業立ち上げのための、アライアンスは一つの大きな軸で、そのために2023年下半期は社外の多くの人とお会いしました。

そうした中で、アサヒ社と出会い、何度も議論を重ねる中で、これは血族関係を持って一緒にやった方がいいねと出資・資本業務提携に至りました。

いま口腔領域のAIソリューションで、事業を一緒に作っており、これをしっかり立ち上げるべく多くの時間を費やしています。

既存の知見が活かせる部分もありつつ、新規領域でもあるので、詳しい方にヒアリングを重ね、業界構造の理解・顧客のペインやニーズを特定、解決するソリューションを考え、ビジネスモデルをつくる。

こうしたゼロイチを久々にやっている感覚があって、やっぱりこのフェーズが僕は一番すきなんだなあと実感します。大変だけど毎日楽しくやってます

めちゃくちゃ社会的課題の大きさと事業収益の両立した事業が作れそうなので、また発表できることを楽しみにしてください!

——

プライベートでは、
意思決定において、我慢することを極力やめることを心がけました。 

コロナの感触がまだ強かった2022年を終え、我慢や諦めへの反動もあるんだと思います。

心が動いたら行く、少しでも迷ったら買うを意識し、息をするようにチケットを買いました。

その結果海外には7カ国訪問し、タイに3回いきました。笑 

僕はいつもニコニコしているのですが、同じくニコニコしているタイ人を見ると僕はタイ人なんじゃないかと思います。お友達もいっぱいできて第二の故郷です。

コロナ前毎年行っていたバリも3年ぶりにいけました。シンガポールは住んでいたとき以来6年ぶりです。

インドはワラナシのガンジス河、タージマハル、ゴアと一度は行ってみたかった場所にいけました。デリーはもういかない。

国内もあちこちいけて、仕事も含みますが、毎年いく熊本、金沢に加え、福岡、佐賀の唐津・有田、葉山がとても印象に残っています。

あと、何年ぶりだろうという感覚で音にのめり込みました。

もちろんずっと音が好きだったけど、自分の中では久々の感覚でSpotifyDigしました。

聴く音楽は有意に変わりました。

いまはKPOPeDMばかり聴いていて、実はこれはグローバルヒット100みたいな好みなのではないかと思っています。笑

どちらもタイがきっかけだったと思います。

タイのクラブはK-POPばかり流れていて、毎夜気持ちよく踊りました。

その後、CoachellaBLACKPINKを知り(ちゃんと聴いたのはそこが初めてだった)、一時はBLACKPINKしか聴いてないような日々があって、

これは遥か昔、音楽を聴き始めた当時のU2、ナンバーガールや、サニーデイ・サービスへのハマり具合以来だなというくらいです。

BLACKPINKは一番いいときにライブで見たくて、タイまでライブにいきました。 最高でした。推し活の気持ちがはじめてわかりました。

タイにいる先輩にEDMをあらためて教えてもらって聴き始めました。

気づいたら2023DJ MAGTOP100DJのうち10人のライブを見るという激変化です。

いままでチャラそうと敬遠してたが、たぶん今年はultraすら行くかもしれません(一緒に行ってくれる友達がいれば)

 

 

2023年の映画ベスト10

さて振り返りが長くなりましたが、映画ベスト10です。
今年も映画によって僕の人生に大きな影響を与え、支えられました。
いつも通り愛してやまなかった順。
 

1.フェイブルマンズ(スティーブン・スピルバーグ、アメリカ) 

2.ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい(金子由里奈、日本) 

3.イニシェリン島の精霊(マーティン・マクドナー、イギリス)

4.PERFECT DAYS(ヴィム・ヴェンダース、日本) 

5.バビロン(デイミアン・チャゼル、アメリカ) 

6.逆転のトライアングル(リューベン・オストルンド、スウェーデン) 

7.aftersun アフターサン(シャーロット・ウェルズ、アメリカ) 

8.kidnapped [公開名:エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命](マルコ・ベロッキオ、イタリア・フランス) 

9.エリザベート1878(マリー・クロイツァー、オーストリア・ルクセンブルク・ドイツ・フランス)

10.ソウルに帰る(ダビ・シュー、フランス・ドイツ・ベルギー・カンボジア・カタール)

観た作品は102、ほぼ劇場。 

 

今年はいつも以上に大変に迷いました。 

1位と2位は、僕の偏愛映画です。この映画を2TOPに持ってくる人はたぶん僕しかいない気がします。 

 

2023年の1位は、スティーブン・スピルバーグの「フェイブルマンズ」。 

 

物心ついたときから映画で育った僕は、スピルバーグの映画が何よりも楽しみでした。 

 

ふだんは真面目な中学生でしたが、スピルバーグの新作がかかれば学校をさぼって、初日・初回、誰もいない映画館の最前列で観るような生き方をしてきました。 

マイノリティリポートやAIといった作品を観ながら、スピルバーグが描くスクリーンの向こう側に世界の、未来の可能性を感じていました。 

そんな映画少年だった僕が愛したスピルバーグが、自身がただの映画少年だった時代の個人史を映画に撮るという「フェイブルマンズ」は、僕にとって奇跡のような映画でした。 

 

その意味でこの映画を1位におかずして他はない、というような特別な作品です。 

 

さて、フェイブルマンズが個人史を映画史にするという試みを果たしたその直後に、「バビロン」は、映画史の一部であろうとする人間たちを描いた偉業でした。 

映画に夢中になった私たちは時に、スクリーンの向こう側とこちら側の境目も曖昧になっていき人を狂わせるものです。 

僕も映画史の一部でありたい、という欲求が根底にある分、この映画は大変特別な印象を持ちました。 

そうした映画史=人類史を189分で駆け抜けた作品に拍手です。 

 

2023年は、この2本の映画が同時に誕生したことが最も強く記憶に残るでしょう。スピルバーグもチャゼルも、これ撮ったらもう映画撮るのやめちゃうんじゃないかという不安が現実にならないことを祈ります!

 

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」も、個人的な思い入れが強く、2位にさせていただきました。 

社会や会社という、気合いいれてないとうまく立ってすらいられない現実と、私との距離がうまく掴めなくて苦しんでいる、 

そんな人たちにとってこの映画はきっと救いになる。もっと上映機会が増えてほしいなと思う、とても大切な作品です。 

 

3位は「イニシェリン島の精霊」も凄まじかったです。 

人生を変えるためには「付き合う人を変えろ」なんて言葉が流行ったこともあるけど、 

教養のある人が自身のステージを上げるために、これまで付き合ってきた過去の友人を意識的に切っていく、 そんな生き方をしている人は僕の周りにも多く見てきました。 

その意味で昨年の「神は見返りを求める」にも通ずるテーマではあるのですが、 
本作では、突如態度変容するコルムの裏側に感じるサスペンス性が、大きな組織や宗教といったものに操られているのではないかと推察してしまうほどの不穏さで、しかしそれが極めて個人の欲望からくるものだということわかった瞬間に一気に引き込まれた一作でした。 

 

ここから先は一言ずつ。 

4位は「PERFECT DAYS」、もう何もいうことはありません、パーフェクトです。 

6位「逆転のトライアングル」実は大学生の時そんな小説を自分で書いていたくらい、複数人が孤島に閉じ込められるサバイバルものが好きで、それは人間の本性が炙り出しやすい環境だからゆえなんですが、「逆転のトライアングル」は、こんな小説を書きたかった!と思わせるほど完璧なシナリオでした。 

7位「アフターサン」今年一番泣いた。なんだかずっと胸を抉られていた、何度でも観返したい大切な作品です。 

8位「Kidnapped」、東京国際映画祭にて。洗礼とか背景情報何もわからない中で見たにも関わらず、ずっと面白かった。 

9位「エリザベート1878」、ヴィッキー・クリープス! 

10位は「ソウルに帰る」、国際養子のために、伝統的な韓国人の顔つきをした内面はフランス人の主人公。彼女の危ういまでの奔放さに魅了され、しかし凡庸な幸せを得られそうになると全て破壊したくなる衝動にも共感する。あと韓国かっこいい。 

 

 

なお、ベスト10に入らなかったのですが、 「まなみ100%」「春画先生」「市子」「怪物」「愛にイナズマ」「キリエのうた」はいずれも強く印象に残りました。 

 

 

2023年アジデミー賞 

最後にアジヘル版アカデミー賞、アジデミー賞の発表です! 

 

主演女優賞は、「エリザベート1878」でエリザベートを演じたヴィッキー・クリープス。
美がアイデンティであった女性が、その美貌で男を翻弄し続けた後、加齢を重ね、少しずつ失われていく自信の美しさに対する葛藤がとてつもない演技でした。
 同じくコスチュームプレイものである「ナポレオン」のヴァネッサ・カービーも同様の役回りで素晴らしく印象に残っていますが、自分も歳を重ねていく中で、その感覚への共感が深まっているというのだと思います。 やーすごかった。

 

主演男優賞は、「PERFECT DAYS」の役所広司に。 

全編ほぼ喋らないにも関わらず、あれほどまでに感情を表現できる俳優は日本にやはり彼しかいないのかもしれません。 最後の泣きながら笑う長回しはちょっとしばらく忘れられません。 
どんどん好きになるぜ役所広司。

 

助演女優賞は、安達祐実 

今年もっとも意識した女優かもしれません。今年は「マイナイト」や「春画先生」、加藤拓也の舞台「ほつれる」と、3回も見ました。 

「春画先生」で最強すぎた北香那に負けじの超ドSの元カノを演じたかと思えば、「マイナイト」でタワマン住まいながら、夫にDVされ、自信を失った女性を演ずるという「私なんておばさん」だからと自虐したりと、幅広な役柄を演じて見せてくれました。 

 

 助演男優賞は、「首」の加瀬亮に。織田信長の新解釈を存分に堪能させていただきました。 「首」の衝撃をぐっと格上げしてくれたのは、加瀬くんのおかげだと思います。 

 

 新人賞は、「春画先生」の北香那に!体を張った演技とはまさに彼女のためにある形容です。 

 

見終わってからしばらくは、 「キタカナ!キタカナ!キタカナ! 」と何度叫んだことでしょう。 

 

もしかしたらテレビなどでは有名な女優さんなのかもしれないのですが、 家にテレビがない僕としてははじめてスクリーンで目撃した女優さんとして、新人賞を捧げたいと思います。

 

 

 

さて、2024年もすでにとんでもない映画年になりそうです。 

すでに今週には三宅唱の「夜明けのすべて」が控えています。 

今年も映画と共に、そして映画のために生きていきたいと思います。 

 

何か思うことなどあればいつでも飲みに誘ってくださいね! 

では今年もよろしくおねがいします!! 

 

昨年までの映画ベストはこちら(一部過去ブログにリンクします。)

2022年映画、ベスト。理解しあえない人と人との間でわたしたちは。
オールタイムベスト
2022年ベスト
2021年ベスト
2020年ベスト
2019年ベスト
2018年ベスト
2007年ベスト
2006年ベスト

2023年に触れたカルチャー全作品の星付はこちら

https://spotty-adjustment-586.notion.site/Cultures-Movies-Books-Music-Art-Comics-5dec167d85124e45a6973f999bcc20a2

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