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スタートアップ経営しながら、自然の中で働く。僕が大自然リモートをやる理由

大自然リモートのすすめ

大自然で働くということ

皆様、こんにちは。田中大地です。AI医療機器ベンチャーのアイリスという会社のCOOを努めています。
今日は僕が取り組んでいる自然の中で働くことについて書こうと思います。

Facebookなどでもお伝えしましたが、長らく知床・網走・北見でリモートワークしていました。知床は3年連続3回目。こんな知床に通う人生、10年前は想像してなかったな。


実はコロナ禍になってから、こうした大自然の中で働くことを「大自然リモート」と称して繰り返しておりました。北は知床(x3回)〜南は宮古島(x2回)、ほか金沢や熊本、山中湖や強羅などを移動しながら自然の中で働いています。



熊本の自然は特に格別でした。山と森の神様がいました。


これまでも年末年始は毎年金沢で過ごしていましたが、去年は3週間ほど滞在しリモートしていました。おそらく今年もそうします。冬の金沢の鰤が死ぬ前に食べたいもの第一位です。


そうした取組みが評価され、リゾートワークス社が主催の #ワーケーションアンバサダー にも認定頂いたりもしました。箕輪さんと並んでしまった。


僕が大自然リモートをする理由

さて大自然の魅力が伝わったかなーというところで、なぜ僕が大自然リモートをするのか、というところについて考えてることについても話してみようと思います。

だいたい3つくらいあります。

1.シャープな意思決定をするために、体調/メンタルを安定させる

スタートアップ経営は毎日のようにハードな意思決定が求められます。

自分の頭が冴えきってない状態や、疲労が溜まっている状態では、シャープな意思決定はできません。毎日のように詰まったmtgのそれぞれにおいて手を抜いて良いものはなく(それならばmtgはやらない)、常に自分の最大風速を出し続けねばなりません。

また、ハードな出来事が起こると日々自分の体調やメンタルを確実に摩耗させていきます。
仕事面に日々ハードな意思決定をするためにも、心身をしっかり整えておくことが極めて重要です。

そうした中で、自分が大自然訪問をはじめた最初の理由は、こちらの過去記事で書いたのですが、自分が健康でないのに、会社の健康を維持することはできないと心底思います。


そうした背景から、コロナ前は、体調を抜群にするために月1大自然訪問すると決めてから、仕事-プライペート双方であちこち行ってました。

2019年は、4月鳥取→5月はバリ島→6月は知床→7月に伊豆大島、苗場(フジロック)→8月御岳山→9月長野→10月ベトナム(フーコック島など)→11月ドイツ→12月沖縄、インド→1月金沢→2月アメリカ(アナハイムなど)と毎月ベースで自然訪問していました。しかし、3月以降コロナの影響で行けなくなってしまっていました。

でも、コロナによって上述の通り、数カ月間ほとんど自然探訪できずの日々を過ごしていたのですが、どんどんと回復できず、うまくいってないなと思う時期が続きました。

そして、2020年6月、知床に飛び大自然リモートをはじめました。一時期なんでこの素晴らしさを忘れていたんだろう、ってあらためて実感しました。


2.自分なりの地域に貢献する方法

これは当時そう思っていたぞ、という意識が強く、今は徐々に状況は改善しているようにも感じるのですが、自分なりの地域や観光産業にお金を落とすぞ、という思いが強くありました。

いまでこそ医療領域にどっぷりですが、実は僕が新卒で入った企業リクルートでは、5年間じゃらんの仕事をしていました。
僕の仕事の原点は旅行業界だったし、今回のコロナによって、自分のかつて担当させていただいていた顧客(旅館・ホテル)や、観光産業の人たちから、非常に苦しい声を聞いていました。

当時、旅行代理店であるHISが99%売上減、みたいな話も話題になりましたが、その先の小規模企業/個人事業が多い旅館のダメージは計り知れぬものがありました。

幸い僕自身はこのコロナ禍の状況においても、自分の収入が減るということもなく、何か自分ができることはないか、と考え当時出した結論は、KPIを設定し、お金を使うことを決めました。


結果、収入は増えてもそれ以上に支出が増やしまくったので、損益として貯蓄は増えないのですが、多くの人が家を出ず、外食も減り、お金を使わなくなった、だからこそ僕は使うぞという思いです。

これは、2021年も同様のKPIを設定して継続をしています。

3.移動し続けることで保守、保身化することから逃れる

僕の生き方の根っこの思想のひとつに、人生の意思決定において制約になりそうなものはできる限り持たず、常に機動性高く動ける状態を担保しておく、というものがあります。


そして、いくつもある制約の中でも「土地」は極めて大きな要素です。

「生物と無生物のあいだ」の著者 福岡伸一氏は、最近文庫化されたレイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」(文庫版)に以下のようなコメントを寄せます。

大人になると、つまり性的成熟を出すと、生物は苦労が多くなる。パートナーを見つけ、食料を探し、敵を警戒し、巣を作り、縄張りを守らなければならない。そこにあるのは闘争、攻撃、防御、警戒といった、待ったなしの生存競争である。対して、子供に許されている事はなんだろう? 遊びである。性的なものから自由でいられるから、闘争よりもゲーム、攻撃よりも友好、防御よりも探検、警戒よりも好奇心、それが子供の特権である。つまり生産性より常に遊びが優先されて良い特権的な期間が子供時代だ。

自分の場所を持つ、ということはまさに巣を作り、縄張りを守るということです。
土地でも人間関係でも仕事でも、何か一つに固定をするということは、人を簡単に保守・保身に揺らがせます。
これを人類の生物学的本能に近いものですので、意識の問題で打ち勝つことができるほど多くの人は強くありません。だからこそ、システムとしての移動を自分の生活に組み込んでしまう、ということは有効だと思っています。

移動をすることは、自らを相対化し続けることです。



▼移動がもたらす効用について考えるときにおすすめの本


ちなみに、大自然リモートの話をすると、よく「だったら自然の中に移住は考えないんですか?」とよく聞かれます。

だから、これについては、僕は現時点では明確にNoだなと思っています。
移住してしまっては、またその地に縛れられてしまうし、なにより僕は東京が好きだし、東京に住む友人が好きです。カルチャー好きの自分としては、東京でしか触れられない映画や音楽が多数あることも魅力です。

まだ、ここに人生を張ろうと決めた地があるわけでもありません。(バリとカリフォルニアは住みたい)



これまでは、一部の資産家や極めて高スキルを持った人以外は「働く場所≒住む場所」という状態が続いていたと思いますが、今回のコロナをきっかけに、それでもまだ一部だとは思いますが、住む場所と働く場所を分離することができることがわかりました。

その大いなる実験をしてみたいなと思います。


「地方に移住します」という違和感

あと、東京で働いてきた人が、地方に移住する=上がった感を感じてしまう、という感覚も、正直あります。

震災〜今回のコロナをもって、地方移住のハードルが極めて低くなっているのでそんなことはないんだろうなと思いつつ、まだ何も成し遂げていない自分が移住なんてやっぱりまだ考えられない、僕もまだ、東京で泥水をすすってるのが似つかわしいよなとと思います。(念の為、これは誰かをディスっているわけでも、周囲の人の今後の意思決定をどうのこうのいうつもりもなくあくまで自分ごとです。)

ただ、せっかく住む場所と働く場所の結合が分離できることがわかったので、自分の人生を通していろいろ実験し、考えていきたいテーマだなと思っています。

「いま、地方で生きるということ」という本の中で、こうした文章があります。

20年ほど前に友人からある建築家がこんなことを述べていると言う話を聞いて以来忘れられずにいる。 「どんな建築を作るかと言う前にどこで生きていくのか、自分が生涯を通じて関わる場所をまず決めなさい」

かつてのパラダイムであったらそれが普通かもしれません。こうしたパラダイムを変えるぞという、大自然リモートを続けながら、発信をしていきたいと思います。


まだまだ広がるには課題は多い

もちろん新しい取り組みなので、課題もいくつかあります。



まず先立つものとして、お金ですね。

マイルや、当時はGo Toやらフル活用してるのですが、とはいえ割引後一泊5,000円+レンタカー代(結構馬鹿にならない)+外食などの食費やらなんやらもかかるので(僕は東京いると会食ばかりなので、むしろ減ってる説もあるけど)、1日あたりMin1万円とかの予算感は必要になります。

2週間滞在すると、20万円は覚悟するので、これで東京の家賃がゼロならいいのですが、そうもいかず、それなりにコストはかかります。僕の場合は、上記の地域にお金落とすぞの目的でしばらくはむしろ資産を減らしてでもやりにいこう、と整理しているのでいいのですが、やはり誰でもやれるぞってものではないなと思います。



そして通信環境。

基本は日中は仕事し続けてるわけで、Wifiが地方だとまじで弱いんですよね。Wifiの通信速度が載ってる宿泊予約サイトが早く誕生しないかなと思っています。
僕はソフトバンクの50GBの契約でテザリングでなんとか乗り切ってますが、povoとかahamoとかに変えられない。



あと、ワクチン接種でだいぶ変わってきた感覚もありますが、まだ地方で東京から来る人を完全にウェルカムされているのかは不確かさがあります。

「東京から来ました」というと、9割くらいがほぼ何も気にしていないと思うし、遠くからまあようこそ、みたいな反応なんだけど、1割くらい少し濁った反応をされることもある。だから、現地の人との「どこから来たの?」という質問に一瞬回答が詰まります。

このあたりは、人それぞれ思うところがあるだろうから、人の考えまで口を出そうとは思わないですが、ただ、その人の話を聞くのみかなと思います。

会社経営の側面でもポジティブ

一時期流行った「新しい生活様式/New Normal」という言葉は便利だけど、非日常を日常と受け入れる思考停止な発言にもなりうるな、ということをあらためて感じますし、やはり人間は自然の中でこそ自分自身に還れるということを思い知りました。(僕は大学生のとき「自然に感謝する人」とか苦手だったのですが、段々そうなってきてます。そういうものなのかも)




また、こういう取り組みを積極的に応援してくれる会社がとても好きです。

多くの会社で「リモートで、1ヶ月北海道で働きます」なんて言ったら、「え、何言ってるの?」という反応されてもおかしくないと自分でも思います。僕でもかつてはそういう反応してたと思います。

が、もっと飛んだ意思決定をしている人たちが社内にたくさんいるし、大自然リモートいいね!ってなる雰囲気です。

アイリスは制約を外し、思考を飛ばすことができる環境があるの最高ですね。

あわせて、アイリスのBusiness Insiderでのインタビュー記事でもかかせてもらいたいのですが、この取組をしていくことが自体が、経営的にもポジティブだと確信しているので、場所に制約されないで真剣に仕事と向き合える環境をつくっていきたいと思います。

そのほか、リモートワークにも意識的に取り組んでいます。生産性や効率性といった議論を超えて、「住む場所」と「働く場所」を両取りできるようにしていきたい。住みたい地域を選び、そこからでも本気で働いて事業に関わるというのが、経営的にもポジティブな働き方だと考えていますし、そういう仕事を提供できると思っています。

実際に、アイリスには神戸や岩手、宮崎など日本各地に社員がいます。取締役CTOの福田敦史は、もともとフルリモートワークで有名なキャスターのCTOでしたから、そういったカルチャーがいかに成立するかを知っているのも要因の一つでしょう。


リモートワークが当たり前になってきたといっても、まだまだ東京にいないと経営や事業の根幹には関われないという会社がほとんどだとは思います。

アイリスはそんな世界をとっとと脱却するぞ、そんなことを考えながら、来年はバリ島で一ヶ月働くぞー!と思って、こないだ会社の全体MTGで宣言しました(コロナ落ち着いて海外に普通に行ける世界が来るといいな、そういう世界にしよう!)

そして、大自然リモートの本でも出したいなと思ってるので、出版社の方是非ご連絡をお待ちしています!笑




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5/5 (6)

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