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2021年映画ベスト10。変化すること、しないこと

2021年映画ベスト

2021年振り返り

新年あけましておめでとうございます。

新年から仕事がハードな感じで、時間をとって文章を書く時間がとれず更新が遅くなっちゃいましたが、恒例の2021年の映画ベスト10!なんとか1月に滑り込み。



今年は、4年連続金沢で年越し、新年の習慣にしている尾山神社に参拝。

おみくじは中吉で、「ひきしおの引きはみちくるあしたあり 心しずかにときをまつべし / いまは人のしらぬ胸の苦しみがありますがさわがず信神して時の来るのをまち身をつつしんで行いを正しくすれば必ず幸いを得る時が来ます」というメッセージにずいぶん救われる。



10月頃から不調が続いていて5-6年ぶりくらいにズーンときてるものだし、不調なときは何やってもうまくいかないものなのでその度に落ち込むループを繰り返していた。
尾山神社さすがよくわかってんじゃん。毎年毎年言い当てられるので2022年の年明けも僕は尾山神社に参拝しているのだろう。

おみくじも言うように、しんどい状況でも僕が唯一やれることは、自分にだけは嘘をつかず、ただ誠実にやっていくことしかない。


自分の意思決定や振る舞いは、たとえどこを切り取られても、自分なりの理由が説明できるようにすること。
たとえその行動が一時的に人に理解されなかったり、受け入れられなかったとしても、自分が信じてることをやり通りそれだけは絶対に守るんだと。



人がつぶれる理由で一番多いのは勝手に潰れることだそうだ。
自分はもっとこうできるはずだという理想が高く、現実のGAPに苦しむ。そのGAPを見て、なんで自分はできないんだろう、と勝手に落ち込み悪いループにまわっていくんだと言う。

理想との差分じゃなくて、昨日と差分だけ意識し「昨日よりは少しはよくなったから今日はオッケー」という気の持ちようやってれば随分楽になるよ、なんてことを聞いてすごく楽になった。
しんどいときに相談できる信頼できる人が多くて幸せだなあと思う。



年始に富山にいったとき、錫(スズ)という素材を知った。
一見、アルミニウムのような見た目をしているのだけれど、外部から力をかけるとびっくりするほど曲がる、それなのに折れないことに驚いた。僕は錫みたいな生き方をしたいなーと思った。芯は強く見え、柔軟で、決して折れない。

あとは、長期でコミットするために、ちゃんと休息することをもっと意識しなければならない。というわけで大きめの休息も今年はとるぞ。

と、冒頭から暗めの雰囲気だったけど、もちろん楽しいこともたくさんあった2021。

今年もたくさんの友達といっぱい飲みにいって思いっきり笑ったり泣いたり。
街としては野毛に加えて千住に行きつけるようになって、ホームの飲みエリアがもうひとつ増えたことは人生に大いに明るい。千住にもっとコミットしたいなと思うようになる。



また、2021年は家をリフォームするのがとても楽しかった。
素敵なデザイナーさんと一緒につくった憧れだった壁本棚をオリジナルでつくったのが超お気に入りで、毎日夜本を読む生活をするようになった。

ホームの好き度があがったので以前よりペースダウンしたが、大自然リモートもいっぱいした。愛してやまない宮古島、知床、網走、金沢にもちゃんと訪問できたし、沖縄本島の魅力を知ることもできた。

2022年はともだちからもオススメされることが多い長野に挑戦したいな!(予習でBRUTUSを買ってみた)



2021年映画ベスト10

さて、自身の振る舞いを見つめ直す触媒となるものは、僕にとっていつも映画だった。自分がどうありたいのか見失わないために、特に後半は映画を観続た。
スクリーンの中で、僕もこうありたい/こうはありたくない、という人を見つけ、その度に自身の行動を見つめ直した。12歳の頃から、いつも映画にばかり勇気をもらった。



数えてみると、2021年に観た映画はちょうど100本だった。

100本を超えたのは、2013年以来でそれはかつて映画の仕事をしていたときに試写会も行き放題だったときのことだ。(ちなみに2013年は144本、ベンチャーでハードに仕事しながら、その本数は我ながらすごい)

2020年に封鎖されてしまった映画館。その失われた一年を取り戻そう、という思いもあった。
2021年の劇場公開作は1,000作品を超えたと聞く。通常600-700作品と言われる中で、映画業界全体が、失われた何かを必死に取り返そうとしている。それに観客が呼応する。

一席空きだった映画館が満席になる姿を見る度に泣きそうになった。これは新たな映画体験だった。映画館に行くことはライブに行くことだなと何度も思った。



さて、そんな2021年現在の自分に最もアクチュアルに響いた10本、愛してやまない順。

1.『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介、日本)

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2.『花束みたいな恋をした』(土井裕泰、日本)

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3.『街の上で』(今泉力哉、日本)

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4.『映画大好きポンポさん』(平尾 隆之、日本)

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5.『ドント・ルック・アップ』(アダム・マッケイ、アメリカ)

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6.『アメリカン・ユートピア』(スパイク・リー、アメリカ)

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7.『孤狼の血 LEVEL2』(白石和彌、日本)

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8.『クルエラ』(クレイグ・ガレスピー、アメリカ)

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9.『サマーフィルムにのって』(松本壮史、日本)

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10.『ヤクザと家族』(藤井道人、日本)

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変化すること、変化しないこと

僕の中で2021年のテーマは、「変化すること/変化しないこと」だった。

2021年は年初にアステラス製薬の全社イベントに基調講演で呼んでもらった。
与えられたテーマは「Beyond Borders」というモノで、その解釈は自由だという。

医療・ヘルスケアに関する講演は多数登壇してきたけど、こういう抽象度の高いテーマで講演をするのははじめてで、しかもそれが社長の次の発表とかそういうタイミングで基調講演だったので、結構時間をかけて「自分はいま世界をどう捉えているんだろう」のあらためて言語化を試みた。講演を契機に自分の考えを絞り出すことを徹底的にやることは、久しぶりで、とても刺激的なことだった。

その結果、「変化することって超大事だよね」という講演内容になった。



今も、ある側面で変化はとても大事だと思っている。

未曾有の感染症は、6,500万年前に落ちてきた隕石に例えられる。隕石が落ちてきたときに変化ができなかったマンモスなど地球生物の75%は絶滅した。歴史が証明するように、一見リスクのあるように見える「変化すること」は実はむしろ生存確率を上げることにポジティブなのだ。



しかし、実際変化することは、そう簡単なことではない、ということは映画が教えてくれる。



たとえば『ヤクザと家族』は変化の映画だ。
ヤクザ全盛期を生きた綾野剛が20年のときを経て刑務所から出てくると、ヤクザの世界は大きく変わっている。
かつて憧れだった組長は年老いた。組織の人数は減り、薬はやらないという矜持を忘れ、薬の売人となっている。綾野剛は、変化をしようと必死である人たちを侮蔑し、葛藤はしつつも結果変化できないまま、最期を迎える。



『ドント・ルック・アップ』は更にスケールを広げ、変化することのを難しさを個人単位でなく世界単位で描こうとする。
明らかにコロナ禍中/トランプ政権における世界を描いているが、人類に訪れる危機は感染症ではなく、地球に落下しようとする彗星だ。まさに今世界で起こっていることを氷河期になぞらえて語る手法に、アダム・マッケイのインテリジェンスを感じる。

6,500万年前と違い、テクノロジーは進化して彗星が落ちてくることが予期できる現代に置いても、多くの人は行動を変化できない。

危機に瀕して、意思決定機構は機能せず、リーダーシップはこうも無意味なものなのかを突きつけてくる。
僕らが憧れたアメリカ大統領(メリル・ストリープ)や、ジョブズとイーロン・マスクをミックスしたようなテクノロジー企業の超有名CEO(マーク・ライランス)ですら変化できない。

環境の大きな変化が起こっているときに「変化しろ」と言うのは簡単だ。でもそれは変化して生き延びられた人の成功者バイアスでしかない。
しかも、一度や二度は環境変化に適応して成功を勝ち得た人も、既得権益が大きくなってしまうと、それを守ることに必死で身動きがとれなくなっていく。変化し続けることはそんなに簡単なことではないのだ。



また、一方で、僕は、変化して生き残りたい部分もあるし、こんな変化をしてしまうなら死んだほうがマシだというケースもある。

僕は、『花束みたいな恋をした』の菅田将暉(「もう映画もマンガも何見ても興奮しないんだよ!パズドラしかやれないんだよ!」)はまさにそれだ。(学生時代の友人に菅田将暉みたいになっていった友人は多くいた。全然会話が噛み合わなくなったし、話しても楽しくないので会わなくなっていってしまった。)


映画を観ることで時代を見る

他にも時代性を感じるテーマが例年以上に多かった。
いくつかの映画がコロナ禍の世界を取り扱い、登場人物がマスクを着けるようになった。

自身の映画で東北大震災を映画で取り扱い続けた濱口竜介であれば、コロナ禍の世界を描くことはわかっていた。
それでも「ドライブ・マイ・カー」のラストシーンは十分動揺した。

マスクなしで人と会話するときに生まれる微妙な距離の違和感。人を人が接することばかり追い求め続けている自分にとっては、この違和感はとっととなくなってほしい。



この映画を50年後のシネフィルが観たときに、一体どんなことを思うのだろうと考えた。
「かつてそんな時代があったのだ」と、「不思議な世界があったもんだな、よかったこんな時代に俺は生まれなくって」と思っていてほしい。

僕たちが第二次世界大戦のときに生まれなくてよかったと心底思っているように。



他にも、2021年の今だからこそ撮られたという映画たち。傑作だらけで、10本を選ぶことは2006年以来の難しさだった。

コロナ禍の世界を直接的に描くこと(『ドライブ・マイ・カー』『人と仕事』)、そして暗喩的に意思決定できない政府とディストピアの世界への抵抗を見せること(『ドント・ルック・アップ』『モーリタニアン 黒塗りの歴史』『コレクティブ 国家の嘘』)。

フェミニズム映画の勃興と男性の暴力性を描く映画(『最後の決闘裁判』『プロミシング・ヤング・ウーマン』『17歳の瞳に映る世界』『SNS』『クルエラ』『Swallow』から『花束』『空白』『ラストナイト・イン・ソーホー』)がかつてない類を見ないほどに増えている。

ひとりの男性からすると居心地が悪く、『最後の決闘裁判』に関してはある映画監督の発言が炎上のきっかけにもなった。また、映画の登場人物に同性を愛する人が何の説明もなく当たり前に登場するようになった(その意味で『パーフェクトケア』がすごかった)

歴史を学ぶこと、映画を観ること

歴史を学ぶことは向こう10年や100年を見据えたとき何が起こるかを予知することがわかるというが、僕は映画を観るとここからの2-3年がわかると思っている。映画作家はこれからの起こる未来の兆しを俊敏に捉え映画にする。そして、それはフィクションである分、現実よりも一歩早い。

たとえばスティーブン・スピルバーグが2018年に『レディ・プレイヤー1』を撮ったとき、まだメタバースはオタク世界のものだった。
いつの間にか彼の予知したように世界中がメタバースが広がった。FecebookがMetaと改名すると誰が想像しただろうか。ザッカーバーグもイーロン・マスクもカルチャーに造詣が深く、SF小説や映画に大きく影響を受け、自分の世界観を作っていくのだ。

その意味で映画を通して、一歩先に起きる未来を考えていくことも楽しんでいきたい。



最後にベスト10に選んだ映画について一言ずつ。

『ドライブ・マイ・カー』
もう別格でした、オールタイム・ベストofベストの一本。同時代に、日本からこんな映画が生まれてきたことに感謝したい。
文章は以下の記事に書いているのでどうぞ。

関連記事:  日記 / 映画にとっての救い。濱口竜介「ドライブ・マイ・カー」について極私的な二、三の記憶



『花束みたいな恋をした』
久々に3回劇場で見た。その度に全力で号泣した。有村架純のように僕はありたい。映画好き全人類がそう思うように、これは僕ら自身の物語だ。




『街の上で』
中田青渚という女優を発見したこと。一生見続けていたいくらい可愛かった。俺はイハ一択だかんね!



『映画大好きポンポさん』
人の時間は有限であり、何かで突き抜けたいのであれば、何かを捨てなければならない。映画の編集と重ね合わせて、「切れ、切れ、切れ」と切っていくジーン君がとにかくすごかった。
優先度をつけるということは何か大事なものを切るということなのだ。人それぞれ幸せはちがうわけで自身の幸せとはなにかを考え直す契機をくれる

去年読んでとても刺さった「The Outsiders」という本の中で、人類史上初めて南極点、北極点、エベレスト山頂に徒歩で到達したErling Kagge(アーリング・カッゲ)の言葉が印象に残っている。

「みんな私に憧れるというが、本当に私と変わりたいかと聞かれたらYesとはいわない」

映画以外のすべてを捨てて、作中世界で最も権威のある映画祭の監督賞を取ったジーン君の姿を見ていて、同じことを感じるのだ。




ポンポさんは原作漫画も素晴らしいので是非!




『ドント・ルック・アップ』
コロナ禍の世界を暗喩的に描く話だが、大統領役がメリル・ストリープであったことにもうやられた、と思った。
明らかに、スティーブン・スピルバーグの近年の最高傑作「ペンタゴン・ペーパーズ」でワシントン・ポストの社長を意識した配役である。メリル・ストリープが「ペンタゴン・ペーパーズ」で見せたリーダーとしての大きな変化のあとに、今度はアメリカ合衆国のリーダーでこれをやっちゃうんだから、もうとんでもない皮肉だ。

関連記事:  日記/使命と勇敢な決断、あるいは「ペンタゴン・ペーパーズ」についての幾つかの覚え書き



『ストップ・メイキング・センス』で、応援上映でもないにも関わらず、映画館でみんなが立ち上がって踊り狂った渋谷の夜が最も印象に残る映画体験であった僕からしたら、『アメリカン・ユートピア』は今年一番の映画体験だった。

それは『ストップ・メイキング・センス』にも負けずの体験であって、記録を自ら塗り替えるデヴィッド・バーンにただ衝撃を受けた。芸術を通して政治を語ることはかっこいいんだぜ、とデヴィッド・バーンが教えてくれた。御年69歳と、おじいと呼ばれる年齢になっても、いつまでも一番かっこいい。

アメリカンユートピアの「Utopia」のUは逆に表記されるんだぜ!



『孤狼の血 LEVEL2』『ヤクザと家族』
現代において、極めて暴力的な表現が含まれ、それは他の映画という文化の懐の深さに感謝したい。
コーネリアス小山田圭吾の事件を見ていても、「なにか語ること」が極めて危うい時代に、映画というフォーマットにおいては尚、「語ること」が許容され、劇場というクローズドでありながらパブリックな場に赴けば触れることができる。
これは、同時代に生きる人間として救いだ。



『プラダを着た悪魔』が大好きな僕としては、『クルエラ』は外せない一本だった。エマ・ストーン演ずるクルエラが飛び込みでショーをする度「やれやれー!」と心の中で叫んだ。世の中を革新しようと行動する人に、ネガティブな視線を提供しする人はなによりも許せないし、僕は常に応援する立場にありたい。


『サマーフィルムにのって』 を見ながら、僕の人生かけてやりたいことのひとつは、映画や映画館、ひいてはCultureがなくなってしまうことへの危機感とそれに対する必死な抵抗をすることだということをあらためて思う。
それは、『ドント・ルック・アップ』で彗星の軌道確度を1mmでも曲げようと必死でもがくようなものだ。Cultureがなくなった世界なんて、僕が生きたくないんだから。


極私的映画賞として、
主演男優賞は、『ヤクザと家族』の刑務所入る前の綾野剛(刑務所から出てくるまで綾野剛だと正直気づかなったすごすぎる)、主演女優賞は、『偶然と想像』の古川琴音に!
助演男優賞は、『孤狼の血 LEVEL2』の鈴木亮平、助演女優賞は、『ドライブ・マイ・カー』の韓国人の女性役を演じたパク・ユリム(手話は活劇!)
新人賞は、『街の上で』で中田青渚にそれぞれ贈りたいと思います。



なお旧作(でも日本公開は2021年が初なのかも?)を入れるなら、「映画批評家月間:フランス映画の現在地」という特集で上映された「LES COQUILLETTES(英題:セックス・アンド・ザ・フェスティバル」が最高の一本だった。
sexandthefestival

ソフィー・ルトゥヌール監督が、ルイ・ガレルと運命で結ばれるということを信じている自身の役を演じ、自分の女友だち3人で実際のロカルノ映画祭に運命の人と結ばれに行くという設定からどう考えても面白くないわけがない。
恋に悩む不器用な三人娘がテキーラ煽りながら、下ネタ話しまくる(がやってることは純愛でしかない)というこれ以上ない映画で今年一番笑った!(映画祭フル参加しながら観る映画はたった一本!w)

早くもっかい観たい!!



2021年からこちらのNotionにて観た映画の全記録(星取り付き!)もはじめて、今までで一番記録ツールとして最高に気持ちいい。映画だけでなく触れたカルチャー(本、マンガなど)全般の記録をつけてるので、よかったら眺めてみてください。



また映画はFlimarksを今更はじめてみたのでよかったらこちらよりフォローぜひ!

信頼できる人の結構しっかりしたリコメンドがわかるのがすごくよいので、使ったことない人もぜひとも〜 Twitterでも映画のつぶやきをよくしています。



さて、今年もいっぱい映画見ていくぞー!1/30時点で12本鑑賞というなかなかいいペースでスタートできていて今年も100本超えそうだな〜、というペースです。今年もよろしくお願いします!!


▼昨年までの映画ベストはこちら(2016年以前は別ブログにリンクします、2017年はベスト10に足りる本数がなかったため作成しておりません)

2020年ベスト

2019年ベスト

2018年ベスト

2016年ベスト

2015年ベスト

2014年ベスト

2013年ベスト

2012年ベスト

2007年ベスト

2006年ベスト

5/5 (6)

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