皆さん、こんにちは!アジヘルさんです。
2021年しょっぱなから走り続けてきましたが、ようやく確定申告も終えて、期末で少し落ち着くと思われる3月末までがんばります!
確定申告done!
2020年はアイリスに集中するため、個人事業の案件数は半分くらいに絞ったのですが、単価が4倍近く上がったので売上は前年比2倍で終えることができました!(コロナ助成金対象外…)
単価上がっても依頼もらえるのは単純に嬉しいし、単価に見合ういい仕事をしてくぞ!と思う所存。— アジヘル@AI医療機器アイリスCOO (@healthcareITSG) March 10, 2021
そしてめちゃくちゃ忙しいのに、なぜか唐突にNotionに自分の過去の仕事まとめ、みたいなやつを作りたくなってしまってNotionをいじり始めました。楽しい…!
チームアジヘルも、徐々にチームで活用ツールをesa→Notionに移行も進んでいます。まじでNotionLove〜。
さてさて、いきなり本題ですが、今回の #ヘルステック業界ニュース はメディシス社長が話すIR決算説明動画で、「医薬品ネットワーク事業に初めての競合が現れた」という発言がされていたのでここに注目したので、メディシス&医薬品ネットワーク事業について特集したいと思います!
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ただの調剤薬局とは違う、メディシスの戦略について徹底解剖していく永久保存版です!お楽しみください!
メディシスの現在の事業内容
-メディシスの事業セグメント
医薬品ネットワーク事業とは?
-医薬品ネットワーク事業の概要
-医薬品ネットワーク事業の機能
Eparkが参入開始!
-Eparkとは?
-Eparkの医薬品ネットワーク事業
-Eparkの怖さ
メディシスの新規事業
-後発医薬品製造ビジネスへの本格参入
-オプトと薬局のDX化支援会社を設立
-新サービス「メディシスVAN」
-既存の顧客接点を起点に提供価値を拡張
メディシスの現在の事業内容
アジヘルブログでメディシスを取り上げるのも数年ぶり?ということで、まずは現在のメディシスの事業をおさらいしていきます。
メディシスの事業セグメント
メディシスの事業は、大きく4つのセグメントに分かれます。
1. 地域薬局ネットワーク事業(医薬品ネットワーク事業、調剤薬局事業、医薬品製造事業)
2. 賃貸・設備関連事業
3. 給食事業
4. その他事業(訪問看護事業)
の4つです。
メディシスは、医薬品ネットワーク事業(後ほど詳しく説明)、調剤薬局事業、後発医薬品製造事業、医療モール開発、給食事業、訪問看護、介護事業等、幅広く医療関連サービスを提供しています。
セグメントを収益視点で分析
収益視点で見ると、地域薬局ネットワーク事業が売上の90%以上を占めており、医薬品ネットワーク事業、調剤薬局事業がメディシスの中核事業となります。
現在はセグメント内での詳しい売上は掲載されていませんが、2019年3月期の資料(下記掲載)では、売上貢献が大きい調剤薬局事業が売上の90%以上を占め、一方利益率の高い医薬品ネットワーク事業が営業利益の70%程度を占める格好となっています。
2年間で収益構造的に大きな変化は起きていないと思うので、メディシスは調剤薬局事業で売上を支え、医薬品ネットワーク事業で営業利益に貢献する事業構成であるといえると思います。
医薬品ネットワーク事業とは?
ここで、メディシスの中でも最も注目度の高い医薬品ネットワーク事業について改めて説明していきたいと思います。
医薬品ネットワーク事業の概要
医薬品ネットワーク事業は、「中堅・中小薬局の経営支援サービス」です。メディシスの資料では、「薬局の業務効率化」と「医薬品の流通合理化」を実現するオンリーワンのビジネスモデルとあります。この資料が全体感を捉えやすいものとなっていますね。
医薬品ネットワーク事業の機能
医薬品ネットワーク事業の機能は4つあります。
①医薬品サプライチェーンマネジメント
②デッドストックエクスチェンジ(不動在庫消化サービス)
③薬剤師教育のサポート
④各種サービス
です。
4つの機能のうち、①〜③について、説明していきます。
①医薬品サプライチェーンマネジメント
まず、①医薬品サプライチェーンマネジメントについて説明します。
この機能は、卸と調剤薬局それぞれに対して、「単品単価による最適価格での販売」、「キャッシュフロー構造の改善」という2つのメリットを提供します。
※単品単価取引:銘柄別薬価制度の趣旨を踏まえ、文字通り、薬の品目ごとに購入価格を決める取引
単品単価による最適価格での販売
1つ目のメリットである、「単品単価による最適価格での販売」について説明します。
医薬品流通業界には、一次売差がマイナスになるという課題が存在します。これは、卸の仕入原価が薬局の仕入原価よりも高くなってしまうことです。
卸会社は、このマイナス分をメーカーからのリベートやアローワンスで補填します。
参考 リベートとアローワンス
・リベート:卸業者から薬局等への販売につき一定金額、一定数量を超える売上を達成した場合などに、契約による割戻基準に基づいた金額
・アローワンス:販売促進のためにメーカーから卸業者に支払われるお金
この一次売差マイナスの状況は2004年頃から継続しています。
▼参考記事:医薬品業界の積年の課題「流通改善」問題解決へ国が主導…厚労省 4月にガイドライン運用開始
リンク:https://answers.ten-navi.com/pharmanews/12939/
厚生労働省は、この状況を改善するために「流通改善ガイドライン案」を発表し、その柱の中で「単品単価取引の推進」、「過大な値引き交渉の是正」を掲げました。
これまでの薬局と卸会社の交渉は、1,000以上の薬品を取り扱う薬局側が業務負担を減らすために総価交渉をすることがありました。まとめて仕入れたり、カテゴリーごとに値引きした方が業務負担が軽くなるからです。
参考 総価交渉とは
単品ごとに仕入れ値を決めるのではなく、医療機関が購入する全品目を薬価基準で算出した上で、「ひと山いくら」で割引率と取引価格を決めるやり方
▼参考記事:単品単価取引と総価取引、日本ジェネリック製薬協会
リンク:https://www.jga.gr.jp/jgapedia/column/_19350.html
メディシスの医薬品ネットワークは、単品単価交渉になります。総価交渉で医薬品個々の価値が反映されなかった状況から、医薬品ごとに1つ1つ最適価格で交渉をすることにより、本来の医薬品の価値が価格に反映され、医薬品流通の透明性の向上に寄与します。メーカーにとっても、自社の機能面がしっかりと価格に反映されるので、メリットが大きくなります。
また、メディシスが医薬品の価格を決定するので、これまで中小薬局と卸の間で行われていた値引合戦のような長引く交渉は生まれません。卸と調剤薬局双方の業務負担の軽減につながります。
調剤薬局にとっても、単品単価交渉により本来の医薬品の機能や自社の在庫状況などを考慮して発注ができる、値引き交渉の業務に時間を割かなくて良いといったメリットがあります。
キャッシュフロー構造の改善
続きまして、2つ目のメリットである、「キャッシュフロー構造の改善」について説明します。
医薬品ネットワークでは、支払いが従来の3ヶ月から2ヶ月に短縮されます。
現在、医薬品製造や調剤薬局事業など多角的な事業や設備投資を行う卸にとって、キャッシュフロー回収のスパンが短縮されることは、財務体質の強化につながります。
医薬品ネットワークに加盟している調剤薬局にとっても、3ヶ月から2ヶ月に短縮することで、負債が減り、財務体質の強化につながります。
メディシス社員の記事では、「加盟時に3ヶ月サイトを2ヶ月に短縮しうるか否かで薬局の財務健全性を評価できますし、加盟タイミングに財務体質を強化し共に健全経営を行いましょうと伝えています」と掲載されています。
▼参考記事:「ちかくにいる。ちからになる。」第3回 流通改善の先にある地域医療への貢献とは
リンク:https://yk-navi.jp/interview/831/
医薬品ネットワークは、卸と調剤薬局双方の財務体質強化に役立つわけです。
以下の記事に、医薬品ネットワークに関しての社長のインタビュー記事が掲載されています。詳しく、わかりやすく載っていますので、興味ある方は必読です!
▼参考記事:薬局や医薬品流通の現在と未来を語る(インタビュー記事)
https://yk-navi.jp/interview/
②デッドストックエクスチェンジ
次に②デッドストックエクスチェンジ機能について説明します。
デッドストックエクスチェンジサービスは、ネットワーク加盟店間でメディシスを仲介して不動在庫を売買し、処分コストを減らすオンリーワンの機能です。
大手薬局チェーンは、自社店舗ネットワークで不動在庫を移動・共有できますが、中小薬局ではそれができない状況です。
また、調剤薬局の支出では、材料費が最も大きいと言われています。
IR説明動画では、約2億円程の売上を持つ薬局は、約200〜300万円程の不動在庫処分費用が発生すると紹介されています。売上に対して、1%のロスが発生するというのは小さくない損失ですよね。
デッドストックエクスチェンジ機能は、大手チェーン薬局ではない、中小薬局に対して、不動在庫処分の費用を減らすというメリットがあります。
今後、医薬品ネットワーク加盟店が増加していくことを考えると、地域によっては規模の経済性が働き、デッドストックエクスチェンジ機能が必須な機能となっていくことが予想できます。
③薬剤師教育のサポート
最後に、③薬剤師教育のサポートについて説明します。
中小薬局において、薬剤師の確保は非常に大切です。調剤業務の中心業務は薬剤師しかできないからです。
しかし、多くの薬剤師は、職業選択で大手チェーンを選び、なかなか中小薬局に入社してはくれません。大手チェーンを選ぶ理由としては、大手チェーンの方が年収が高い、マーケティングや経営など薬剤師業務以外の仕事も経験できる、人材教育や福利厚生が充実しているなどが挙げられます。
特に人材教育に関して、中小薬局や個人薬局は大手チェーンのように多くの時間を割くことができません。キャリア志向の高い薬剤師や新卒薬剤師は、人材教育制度が整っている薬局を選択するでしょう。
この課題に、メディシスの薬剤師教育サポートが力を発揮します。
メディシスの加盟店に対して、日本薬剤師研修センターの研修受講シールの交付、eラーニングなどの提供するというものです。
メディシスのこれらのサービスを利用することにより、中小薬局は自社だけでは整えづらい社内教育体制が充実し、薬剤師の採用強化につなげることができます。
医薬品ネットワークの経済効果
医薬品ネットワークは、加盟店が増えれば増えるほど、医療費の削減につながります。
メディシスは、医薬品ネットワークで、以下の資料にある8つのKPIを用いて事業を実行しています。ネットワーク加盟店数が7,000件を越えると、全体で年100億円以上のコスト削減が可能と掲載されています。
在庫処分・返品・急配の削減、発注・納品業務の軽減などを通じて、合理的・経済的に医薬品流通を改善していくメディシスの医薬品ネットワーク事業は、医療費適正化に貢献することもそうですが、本来の医療の目的を達成するために欠かせないサービスだといえます。
Eparkが参入開始!
さて、IR動画では、これまでオンリーワンのメディシスの医薬品ネットワーク事業に、Eparkが参入を開始したということが言及されています。
独壇場だと思ってたメディシスの医薬品ネットワークにEPARK参入したのか、知らなかった。ヘルスケア領域で一番戦いたくない相手だな。https://t.co/aJyhhZC3Ew pic.twitter.com/p1PpGTZGRb
— アジヘル@AI医療機器アイリスCOO (@healthcareITSG) January 15, 2021
Eparkとは?
Epark株式会社は、光通信の連結子会社です。意外と知らなかったよ〜という人も多いのではないのでしょうか?
主力事業として、会員数 2,700 万人超の「EPARK」ブランドにて各業界向けの予約・送客システムを中心としたソリューション事業や広告代理店事業を展開しています。
営業、マーケ力では日本有数といわれる光通信グループだけに敵に回すのはほんとに嫌な相手ですね。
独壇場だと思ってたメディシスの医薬品ネットワークにEPARK参入したのか、知らなかった。ヘルスケア領域で一番戦いたくない相手だな。https://t.co/aJyhhZC3Ew pic.twitter.com/p1PpGTZGRb
— アジヘル@AI医療機器アイリスCOO (@healthcareITSG) January 15, 2021
みなさんの身近な利用例で言うと、飲食店に行く際に利用する、グルメの予約・順番受付サイトが有名ですね。
Eparkの医薬品ネットワーク事業
Eparkの医薬品ネットワーク事業は、医薬品の共同購入、デッドストックエクスチェンジサービスがメインだと思われます。
メディシスとしては、初めてのライバルとのことですが、どうやらEparkももう数年来本サービスの提供をしているみたいですね。
Eparkの怖さ
Eparkの怖い部分としては、先の営業・マーケ力に加えて、薬局の新規開業支援や業務効率化サポートを提供している店舗が20,253店舗であること、現在1,800店舗のEpark加盟店のネットワークがあることです。
メディシスの医薬品ネットワーク加盟店数は5,845件なので、これからのEparkの加盟店数の伸びや光通信グループの営業力などを考えると、今後の2社の戦いは激しくなりそうです。
しかし、メディシスの代表は、今のところ影響がないと発言されています。メディシスの医薬品ネットワークの機能は、単品単価交渉や薬剤師教育サポートなどの実績を蓄積して競争優位性がとても高いので、そこまで強くライバル意識はないのかなと思います。
メディシスの新規事業
さて、ここからは最新の決算で紹介されていたメディシスの新規事業も見てみましょう。医薬品ネットワーク事業や調剤薬局事業で蓄えた基盤にレバレッジを効かせる新規事業を複数立ち上げていっています。
ここでは3つの新規事業を紹介します。
後発医薬品製造ビジネスへの本格参入
まず1点目が、後発医薬品製造販売ビジネスに本格的に参入を開始したことです。
日本調剤のように、自社で調剤薬局を持つ企業が、調剤権を持ちながら、利益率の高い自社ジェネリックに切り替えることは戦略の定石です。これまで製薬企業や卸側の収益となっていた部分も、同グループで得られるので、利益率が大きくあがります。
また、メディシスにとっては、自社の調剤薬局グループに加え、5,400件以上の医薬品ネットワーク加盟店に自社ジェネリックを提供できます。製造ロットも大きくなるので、自社で製薬企業を持つことの蓋然性が高まります。
更に新サービスの「メディシスVAN」(後程詳しく説明)の在庫管理により、的確な需要把握をし、最適で無駄のないジェネリック製造・販売ができるという利点もあります。
メディシスは、100品目、1000店舗への販売を目指す方針で、ビジネス拡大を進めていくことでしょう。医薬品ネットワーク事業と後発医薬品製造事業で、連結営業利益の半分を達成しようとしていることからも、この2事業に対して力を入れていくことが分かります。
オプトと薬局のDX化支援会社を設立
2点目として、2020年の10月から、オプト子会社と合弁会社を設立し、LINE公式アカウントを活用したかかりつけ薬局のDX化を支援するためのサービスも開始しています。
医薬品ネットワーク事業のデッドストックエクスチェンジサービスと融合させるなど、薬局にとってはメリットの大きいサービスになると思います。
メディシスは、中堅・中小薬局向けのサービスだと思われるので、競合他社としては、中小薬局向けに導入拡大を目指すメドピア の「Kakari」が考えられるでしょう。
「Kakari」HP:https://kakari.medpeer.jp/
新サービス「メディシスVAN」
最後に3点目として、メディシスは、2020年7月に医薬品ネットワーク加盟店向けに、薬局向け医薬品在庫管理システム「メディシス VAN」の販売を開始しました。
メディシスVANの便利な機能は、以下の5つです。
自動発注、適正在庫の自動計算、デッドストックエクスチェンジの機能も連携されており、薬局にとって利便性の高いサービス内容です。
メディシスの代表取締役は、自動発注機能の強化に力を入れることを示しています。発注量、在庫量、不動在庫量などのビッグデータを活用することで、薬局業務の自動化の実現、自動発注の制度アップなどを推進していくと思います。
既存の顧客接点を起点に提供価値を拡張
最後に、メディシスがまとめた中核事業を掲載します。
売上や営業利益では、①&②でほとんどを占めているので、実質的には、医薬品ネットワークと調剤薬局(地域薬局)の2つが現在の中核事業です。
これらで保持するアカウントや顧客接点を基盤に、上記で紹介した自社ジェネリック提供や薬局DX担当のサービスと広げていくことで、1顧客あたりの収益額/率を向上していく戦略だと言うことができます。
これからのメディシスの医薬品ネットワーク事業と新規事業がどうなっていくのか注目しつつ、Epark側の動きもウォッチしていきたいと思います!
ヘルステック業界最新ニュース12月号まとめ
⇒メディシスの医薬品ネットワーク事業に初の競合「Epark」が参入!(本記事)
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