皆様、こんにちはアジヘルさんです!
今回は中国オンライン診療の雄、平安好医生(以下、平安【ピンアン】グッドドクター)が、業界初の取り組みとしてオンライン診療専用の医療保険をはじめたということで、ニュース紹介という形で取り上げてみたいと思います。
また本記事では、平安以外も中国で遠隔診療について取り組むプレイヤーの一覧についても紹介します。
平安が有名ですが、アリババやテンセントも取り組む領域になってるんですね。
今回取り上げるニュースはこちらです。
▼2020年10月29日、Ping An Good Doctorは業界初の「オンライン医療保険」を開始
https://www.jk.cn/aboutUs/news/129
平安グッドドクターは、2014年に、「平安保険」という中国最大手保険会社の子会社として設立されました。
こちらによると、1回20元、おおよそ日本円で310円程度で20分程度の診察を受けられるという手軽さで、今では1日あたり83万件のオンライン診療サービスを提供する、オンライン診療企業の中で世界最大の規模を誇ります。
詳しくは過去記事でも紹介しているのでご覧ください。
▼平安グッドドクターの患者向けアプリ
中国国内のオンライン診療業界俯瞰
中国のオンライン診療市場は、2015年頃に本格的拡大を始め、2016年には現・オンライン専門病院である復旦大学付属中山徐匯雲(クラウド)病院が設立、2020年2月からオンライン診療を保険適用とする(実際の適用時期は自治体により異なる)など、世界に先んじて進んできました。
本記事で紹介する平安グッドドクター以外のプレイヤーをご紹介します。
中国国内のその他オンライン診療プレイヤーを、それぞれの患者数や主事業等で比較してみます。
サービス名 | 母体企業 | 母体企業の業種 | 登録患者数/アクセス数 | サービス開始時期 | 特徴 |
平安好医生(平安グッドドクター) | 保険業 | 中国平安保険 | 3.46億人が登録 | 2014年 | 調剤薬局や医薬品会社を自社ネットワークで持つ。2020年12月にツムラ中国支社との提携を発表(12月号記事にて詳しく解説します!) |
Alibaba Health(Ali Health) | Alibaba | Eコマース | 新型コロナ下で1日40万件のアクセスあり | 2014年 | モール型ECサイト「天猫医薬館」での医薬品販売において、2億人弱のユーザを持つ |
好大夫在線 | Tencent | ネット広告、Eコマース | 累計で460万回以上の相談実績あり | 不明 | 80万人弱の医師が登録し、オンライン相談が可能 |
微医(挂号網) | Tencent | ネット広告、Eコマース | 2020年6月時点で2億1,000万以上が登録 | 2010年 | 対面とオンラインを組み合わせ、総合診療と専門診療を提供する |
復旦大学付属中山徐匯雲(クラウド)病院 | N/A | N/A | 17万人登録、2020年3月までに180万人が利用 | 2016年(2020年2月に正式運用開始) | 中国国内初のオンライン診療専門病院。初診オンライン診療も可能 |
サービス提供数においては平安グッドドクターが最大手です。
中山徐匯雲(クラウド)病院を除いたサービスは、いずれも保険事業やEコマース等を主事業として持ち、それぞれ保険事業や医薬品販売のECサイト運営等、強みを生かしたサービスを提供しています。
平安グッドドクターのオンライン医療保険
このように、今回の新型コロナの感染拡大を受けて中国国内でオンライン診療の利用は急激に広がりました。
一方で、オンライン診療の正確さや安全性については、患者にとっても医師にとっても多少の懸念や不安はあるでしょう。即ち、患者にとってはオンライン診療により得られた診断結果及び投薬の正確さ、医師にとっては対面診療を介さないことによる診断ミス等の懸念が生じる可能性があります。
▼中国各地に設置された、通称”1分クリニック(One-Minute Clinic)”
今回平安グッドドクターが提案したのは、Ping An Medical Homeが発表する「オンライン診療総合安心保障」というサービスです。
具体的には、患者(利用者)に対しては1人あたり最大100万円が医療保険として保証され(記事によると、業界でも最も高額とのことです)、薬が処方される場合には、配達時間や薬の安全性についても保証されます。
一方で、医師の場合は1人あたり100万ドルの保険金が保証されており、医療行為の賠償責任リスクを平安グッドドクターが代わりに担う形となります。
こうした、オンライン診療に対する懸念を患者医師ともに保険により解消する取り組みは、業界初とされています。
患者の場合も最大100万ドルの高額の保険を提供できる背景としては、平安グッドドクターの提供するオンライン診療ビジネスが十分に育ってきたこと、3億4,600万人の登録者数及び1日83万件の診療数を背景としたオンラインでの診療の質の高さがあると思います。
インドネシアでバイクサービスをやっているGOJEKが、バイク運転手向けに保険サービスをはじめたように、スーパーアプリの出口としてのマイクロファイナンスは非常に面白い領域だなと思っておりましたが、既に「オンライン診療」という一領域だけで、マイクロファイナンスが成立したと考えると、ついに次のステージに入ってきたなという感覚があります。
今後も業界の未来の方向を見据えるために、中国のオンライン診療マーケットの動きをウォッチしていきたいと思います。
平安グッドドクターの強み
こちらの過去記事にもある通り、平安グッドドクターは、親会社として巨大医療保険会社の中国平安保険グループ、自社のネットワークとして、調剤薬局や医薬品会社、医療機関網をももち、医療の上流から下流まで一貫してサービス提供が可能な点が強みです。
逆に、中国平安保険グループとしても、平安グッド・ドクターを始めとするヘルスケア事業を始め、住居や移動等顧客の生活に関わる事業を買収、運営することで、潜在顧客との接点を増やせるというメリットがあります。
▼平安グッドドクターの事業全体像
出典:http://www.pagd.net/media/pdf/us/pagd-presentation_-en-website-version-final.pdf
2020年前半の新型コロナの感染拡大を受けて大幅に広がったオンライン診療ですが、感染収束後の今後の中国でのtoC医療市場でどのように受け入れられていくのか、気になるところです。
また平安保険がどういう戦略を描くのかは、有名な「アフターデジタル」や「平安保険グループの衝撃」といった書籍にも紹介されていますので、よかったらお読みください!
ヘルステック業界最新ニュース11月号まとめ
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⇒平安好医生がオンライン診療専用の保険を開始、その狙いとは?(本記事)
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