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DeNAのMYCODEの軌跡と遺伝子検査市場のこれから | ヘルステック業界ニュース

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皆さんこんにちは!

最近バタバタしてしまい、更新頻度が落ちてしまっていますが、久々のヘルステック業界ニュースです!今回はDeNAのMYCODEの以下のニュースを取り上げたいと思います。
「健康長寿社会の実現」を目的としたゲノム研究プロジェクト 「MYCODE Research」 2020年共同研究・事業活動 総括レポート | 株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】

DeNAライフサイエンスの遺伝子検査事業MYCODEの中の研究活動『MYCODE Research』の2020年の研究・事業活動報告まとめのプレスリリースについて、直近の遺伝子検査の市場の動きについても触れながら、考察をしていきたいと思います。

これまで個人インターンとしてアジヘルブログを手伝ってくれていた大和くん(@yamato_tsuboi)が今回記事がラストで卒業になります、研究のバックグラウンドもある大和くん視点も入ったとてもおもしろい記事なので是非お読みください!

MYCODEとは

2020年のMYCODE Research事業の活動をまとめたプレスリリース研究事例が17件とのことでした。ある研究では、Natureの姉妹科学誌にも掲載されたようです!すごい!

考察に入る前に、まずは簡単にMYCODEについて触れていきます。

MYCODEの概要

2014年に文部科学省の「今の夢。10年後の常識。新しい未来を作りたい。」という標語を掲げた「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」のなかで東京大学医科学研究所とDeNAライフサイエンスの共同事業として始まりました。

市民が研究に参加し、そのビッグデータが研究を駆動し、そして参加者にその成果が還元されるcommunity-derived scienceを謳ったプロジェクトです。

MYCODE自体は、遺伝子検査事業であり、自宅で唾液を採取するだけで、いくつかのテーマに関する解析結果をフィードバックをしてもらえるサービスです。例えば、がんなどの病気のリスク、体質、祖先のルーツなどを調べることができます。

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なお、プランにもよりますが、検査にかかる料金は3万円程度です(だいたい他社のツールキットも同じ価格帯)。また、オプション料金にはなりますが、検査結果に基づく健康相談も受けられます。遺伝子検査と聞くと、病気のリスクが分かってしまう、、なんか怪しいなどと、構えてしまう人もいるかもしれませんね。

科学的根拠は?

情報管理や質に対しては、ホームページを見る限り、非常に丁寧に、かつ、透明性高く表記されているように感じます。
科学的根拠の質という点について、少し掘り下げると、リスクスコアの基準になっているのは学術論文のようです。その基準は透明性という意味で、真摯に情報を公開していることはとても素晴らしいですね。

科学的根拠の質 | 遺伝子検査・DNA検査のMYCODE(マイコード)

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ただ、その中身という意味では、いくつか疑問に思うところがあります。

一つ目に、論文の質の評価において、いわゆる学術的に行われる方法とは異なり、その論文の結果が歪められている可能性がないかという評価基準の視点が入っていません。対象者の選定方法、評価方法、解析方法など、人が行うからこそ、常にバイアスが組み込まれるリスクがあります。適切に導かれた結果かどうかは、スクリーニングの際にチェックすべき項目と言えるでしょう。

MYCODEの遺伝子検査では、統計的な確からしさが十分である事が確認されたSNP(P値が5.0×10のマイナス8乗未満)のみを採用しています。

二つ目に、HPに上記のようにp値で論文の質の判断をしているというのは、再考の余地があります。
2017年にアメリカ統計協会では、p値だけで結果を判断をするべきではないという声明が出されております。そもそも、p値とは、統計学的に帰無仮説が棄却される確率を示したものであり、論文の質を図る指標ではありません。また、p値が5.0×10のマイナス8乗未満だからといって、その結果が臨床的に意味のあるものかどうかは別の話です。

三つ目に、再現性の基準に関しては、基準に恣意性が入りやすそうなので、誰が行っても同じスコアリングにならないようにも感じます。あくまで公開されている情報のみからの判断にはなりますが、スコアリングの妥当性・信頼性がどこまで担保されているのかは、推し量りかねます。

プレスリリース内容

研究活動

ここからは、今回のプレスリリースのメインのトピックである研究成果に関して、触れていきます。

MYCODE Researchには、利用者が10万人強登録しており、その約9割が研究参加に同意しています。そのため、民間企業が研究開発をしたいとなった時に、短期間で数千人規模の研究対象者を集めることができます。
スピードが肝となるR&Dでは、機動力が高く、非常に魅力的なプラットフォームと言えます。通常、新しく研究する際には、対象者を集めて、データを収集するまでに相当の労力と時間がかかります。

しかし、MYCODE Researchに登録している人は、遺伝子検査をしているようないわゆる健康への関心が非常に高い人が多いと容易に想像がつきます。これは住民参加型の研究だと、どうしても起こりやすい、あるある問題ではあります。研究開発で最終的に届けたいターゲット層のデータがMYCODE Researchにいるのかどうかは、調査結果を解釈する上でも非常に重要で、留意が必要になるでしょう。

また、これまでの研究成果としては、調べた限り、国際科学雑誌に掲載された研究は2014年からの7年間で、2本だけでした(もしもっとあるよ!という場合は教えてください)。主に学会発表という形での成果が多いようです。
事業を見据えたR&Dという点では十分だと思いますが、社会に研究成果を残すという意味では、学会発表だと方法論の精査は十分に実施されないので、専門分野の研究者に査読(批判的なコメント)をされた上で、掲載に足ると認められて掲載される科学雑誌への掲載がもっと増えることを期待しています!

IQVIAとの提携で製薬企業向けデータ利活用ビジネスを開始!

また、事業の横展という目的で、MYCODE Researchの研究結果をIQVIAのプラットフォームでデータベース化し、製薬企業に販売するサービスを開始しました。

ちなみに競合他社のジーンクエストもIQVIAと同様の提携を1ヶ月弱先行してやっています。IQVIAの製薬企業への営業網を生かし、データ利活用ビジネスを一気にスケールさせる狙いでしょう。

DeNA・IQVIA 製薬企業向けヘルスデータプラットフォームでの協業開始 | 株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】

株式会社ジーンクエストとIQVIA ジャパングループ ゲノム統計データのプラットフォーム「Genome Wide Study Platform」を製薬企業向けに提供開始

遺伝子検査事業会社「Zene」が熱い!

最後に競合他社についても触れたいと思います。遺伝子検査サービスには、DeNA以外にも、ジェネシスヘルスケア、ジーンクエスト、Zeneがあります。

ちなみに、Yahoo!が提供していたHealthData Labは2020年9月30日に事業撤退をしています。そして、さらに面白いことに、HealthData Lab事業責任者がZeneを創業しています。このZeneは、これまでの会社と明らかに異なるポジショニングを取っていて面白いです!

次世代ゲノム解析サービスを開発するスタートアップのZeneがインキュベイトファンドから5000万円の資金調達を実施

Zeneでは、精度を高めるために、従来のSNP解析ではなく、「ポリジェニックリスクスコア」と呼ばれる機械学習技術を活用したアプローチを国内初採用しています。

また、健保向けで、価格帯を抑えたモデル(5,000~6,000円)という価格帯になっています。
そして、検査結果にもとづく、個別のフォローアップのサービスが充実しています(脳梗塞リスクの高い人には脳ドックを提供など)。

個人的な意見ですが、既存遺伝子検査の平均単価である3万円の検査を受けても、検査結果をみて終わりになってしまうケースが多く、コストを知覚価値がなかなか上回りにくいな〜と感じています。市場を拡大する上でも、ユーザーにかかるコストを減らすか、価値を高めるためのダイナミックなイノベーションが必要だろうと思います。

その意味でも、健保に切り込み、かつ、個別化されたフォローに力を入れている、Zeneはゲームチェンジできるポテンシャルがあるのではないかと感じています! MYCODEとあわせて今後の展開を楽しみにしていきたいと思います!

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