最近日に日に「医療×AI」は本当に医療ヘルスケアを根本から変えるだろうという思いが強まってきています。
いかにその世界を実現するかを考えてワクワク止まらない感じになっている一方で、現実的に考えれば考えるほど、AIの作り方、取得可能なデータ、製薬の知識が不足しすぎていて立ち止まってしまうので、AIやっている方と飲みに連れて行ってもらい、どうすればこの世界を実現できるのかなんて相談したり、製薬企業の方に色々相談してみたりしてます。
医療×AIの本命、メドレー
さて「医療×AI」というと、まずはメドレーが思いつきますね。
半年ほど前に、メドレー病気辞典に関して、こんな記事を書いたのですが、その際に瀧口社長から、Facebookで下記のようなコメントをもらいました。
「ご指摘の通り、自ら構築したデータの用途は容易に変えることが出来ます。ただ、我々が外部に出している情報は一部に過ぎないし、マネタイズの手段はもっと医療に踏み込んだものにしていきますよ!(そして病院検索はもっとユーザのためのものに早めに変わります)」
その後数か月経ち、メドレーから「症状チェッカー」がローンチされ、そういうことだったか、と大きな衝撃を受けたものです。
僕の浅い推察を遥かに超えたところで、医療×AIを着実に進めている、メドレーに再度惚れた瞬間でした。
(最近ヘルスケアやりたい就活生の方にアドバイス求められることが多くなってきたのですが、メドレーかうちかエムスリーかリクルートが良いと答えていますw)
メドレー 症状チェッカー
何人もの医師や薬剤師が内部、外部にいるメドレーが、オンライン病気辞典でコツコツ作り上げたデータベースをもとに、症状を入れていけば可能性の高い疾患が特定されるというものです。
現在は患者向けのbotという形でローンチされていますが、より精度を高めたうえで、医師側への導入を是非実現してほしいものです。
その際の問題は、日本の医師会、厚労省をどう説得するかでしょうか・・・。ここが日本だと一番難しいポイントですね。
ちなみにこういった話になると、医療×AIによって医師いらずになってしまうでは、とよく言われますが、患者と深いコミュニケーションをとることで、症状を正確に判断し、AIを活用した意思決定ツールを利用しながら、診断を下すのは医師であり、そこは完全に代替しきることはないと思っています。
ただし、これらのツールを使いこなせないなどの理由によって淘汰される医師はいるでしょうが。
東京と地方の情報格差
残念ながら、医療の世界は情報格差だらけです。
東京の最先端病院と地方のおじいちゃん医師がやっている病院では、同じ患者を診たとしても、全く違う診断が下されています。
僕の詳しい認知症の領域で説明すると、一言で認知症といっても代表的な疾患だけ4つの種類があります。アルツハイマー、レビー、脳血管性、前頭側頭型認知症ですね。
さらに、細かいものも含めると、8~10以上の種類に分けられ、もちろん適切な薬や、対処方法も違います。しかしながら、地方では、未だに「ぼけだね」「痴呆症だね」と昔の名前で呼び、年取ったらみんななるものだから諦めなさいと多くの患者が言われています。
認知症ねっと:認知症の種類
https://info.ninchisho.net/type
さらに、認知症自体は発症したら現在の医療では、まず治らない病気ですが、たとえば、水頭症と言われる認知症に似た症状を持つ疾患は、発見できれば手術で治すことができるのです。
認知症と診断された患者の実に5~10%が水頭症の可能性があると言われながら、しかしながら、多くの医師が水頭症の存在を知らないために、診断されていない状態にあります。
現在認知症患者は約500万人と言われますので潜在的には、25~50万人が治る可能性のあるのに、医師が知らないばかりに治せていない状態ということです。
もし、AIが広く導入され、患者を診た医師自身がその疾患を知らなかったとしても、症状を入力していくと、疾患の可能性がサジェストされたらどうでしょうか。
少なくとも、より深い検査をしてみようかというきっかけにはなるでしょうし、医療界の情報格差は解消していくことで、患者のアウトカムは改善するはずなのです。
医療AIは注目の的
メドレー以外の企業もこの領域を、虎視眈々と狙っているでしょう。
処方データとアウトカムデータを持つメディカル・データ・ビジョンが本命では、と友人とこないだ話をしていました。
ほぼ全領域でAIに力を入れているリクルートも狙ってくるでしょう。(こないだ飲食店をやっている友人が、AIを活用したホットペッパーの新サービスを営業をリクルートから受けたと言って、時代は変わるものだなと思いました)
DeNAは先日、人工知能開発を行う、Preferred Networksとの合弁で、PFDeNAを作りヘルスケア×AIをやっていくことを宣言しています。
http://dena.com/jp/press/2016/07/14/1/
医療×AI、導入に時間はかかるものの、実現できたときには、まさに「ゲームのルールを変える」ことになると思っています。
医薬品×AIで医療界の非効率を改善する
更に、僕が本当にやりたいところでは、上記の「診断×AI」の次、「医薬品×AI」をやりたい。
つまり、診断がされたところで、改めて患者のパーソナルインフォメーションと付け合わせ、アウトカム/患者生存率が最も高くなるであろう、最適な医薬品を提示できることができないかということです。
日本においては、DPC化が推進されている状況も後押しし、医薬品DB、レセプトデータとさらに処方後のアウトカムデータが徐々に揃ってきています。
患者の個人情報→症状を入力→疾患特定→最適な医薬品のサジェストが、AI+医師の力で一貫してできうる世界が近くなっているはずなのです。
この世界が実現できたならば、製薬会社が必要なマーケティング活動を限りなくゼロに近づけることができるのではないかと思っています。
つまり、患者の状態にあわせて、最良の効果を持つ薬がサジェストされることによって、AIが感情を持たない前提としたときに、医薬品処方が、マーケティングに寄らない、純粋な判断がされうるということです。
その世界が実現されたときに、製薬会社の仕事は、全力で効果の高い薬を開発することに集中する方向へ変わっていくのではないかと思っているというわけです。
日本で1人のMRにかかるコストは、その経費も含めると、年間2,000~4,000万円といわれます。大手製薬会社では3,000人近くのMRを雇用しています。つまり年間600億円~1,200億円もの費用が1社あたりかかっているわけです。
もし製薬会社がこれらのマーケティングにかけるコストを低減させることができ、より良い薬、すなわち適応症例が多く、患者生存率も高い薬を開発することに集中することができる。そうなれば、より医療はもっと真っ当になっていくはずだと信じています。
短期的にはインターネットで(エムスリーのMR君はディテーリング1回あたりのコストを実MRの100分の1であるとしています)、中長期的にはAIで、不必要なMRの数は限りなく0に近づけることができるはずです。
MRは医師の大いなる味方
勿論すべてのMRが無駄だとは思ってはいません。
僕がこれまでに出会った彼らの多くは、自分の仕事を真摯に捉え、本当に医療のために、患者のためにと思いを持って、毎日真夜中まで働いています。
MR、Medical Representativeは日本語で「営業」とは略しません。「医薬情報担当者」です。
いくら医師が賢いといえど、残念ながら全ての薬を理解しているわけではありません。
医薬品だけでも、代表的なブランドしか覚えていない医師は多いですし、勉強熱心な医師でもすべての一般名や大量のジェネリック、さらにすべての副作用や適応などを完全に理解することは、どうしても難しいのです。その際、MRが医師のすぐ近くにいることがどれだけ価値があることか想像に難くありません。
医師が悩んだときにそばにいて専門知識を持っているMRとしての存在価値は決してなくすべきではないでしょう。
しかしながら一方で、特定製薬会社に所属する営業マンである限り、最後には、医師に自社の医薬品を使ってもらうことが大きな目的となります。
自社の商品を買ってもらうこと、他の業界では営業マンとして当然のことですが、この業界で、医師の選択を変えることには患者の命がかかっています。
私の知るMRの多くも、そこに疑問を感じ、それゆえに、より情報プラットフォームを通して医療を変えられる道を選んだ人が多くいます。
僕の実現したい世界
「インターネットやテクノロジーによって医療界における非効率を解消し、より良い日本と世界の未来を作る。」
できうるならばその未来を実現することに自分が最前線で関わっていられればと思っています。
幸いにも僕はいまその領域で仕事をすることができ、日々目の前の仕事で得た知見をもとに、
将来の事業構想と行き来させることで、少しずつ道筋をクリアにしていけると思っています。
そのために、もっともっと学んでいくために、全力で事業に向かっていければと思っています。(あともう、ほんと業界知識がまだまだ足りなすぎるので、まじで専門的に勉強したい。)
まだ30少し過ぎたばかりで何いっとんじゃとも自分でも思うのだけれども、医療ヘルスケア介護、これらの領域にこれからの人生を全てかけていく所存でおります。
こんな僕ですが、一緒に何かできそうだぞ、なんて思ったらメッセージなどいただけると嬉しく思います。
これまでもこのブログを通して、非常に多くの方からメッセージをいただき、医療ヘルスケアの未来を変えていきたいという思いを強く持った方々と何度もディスカッションの機会や僕の知らないことを教えていただく機会をいただきました。
特に医療×AI、もしやってるぜ、考えてるぜ、なんて方いたら是非メッセージ頂きたいし、色々教えていただきたいです!
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