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1日120万人が訪問する最強医薬品サイトDrugs.comを通して考える情報インフラの競争優位とは

さて、前回非常に好評でしたヘルスケア関連メディアのWebマーケティング分析。

今回は世界における医薬品データベースサイトの圧倒的ナンバーワンDrugs.comについて分析をしたうえで、情報インフラの競争優位性とは何かを考えてみたいと思います。
drugs.com TOP

Drugs.comはこちら(外部サイトにリンクします)

世界における医療・ヘルスケア×Webメディアの3強とは

まず、前段として、世界における、医療・ヘルスケア×Webメディアの領域では、3強と言われるプレイヤーがおりました。それが、

WebMDグループ (NASDAQ上場)
WebMD(コンシューマー、ペイシェント向けヘルスケアメディア)、Medscape(医師を中心とした医療従事者向けメディア)、RXlist(医薬品データベース)などを運営。特にMedscapeは世界中の医師に利用される業界圧倒的No.1メディア。

Everyday Health inc (ニューヨーク証券取引所上場) 
Everyday Health(コンシューマー、ペイシェント向けヘルスケアメディア)、MEDPAGE TODAY(医療従事者向けメディア)を運営。

Revolution Healthグル―プ
Revolution Healthグループは総額5億ドルを超える投資で鳴り物入りのデビューをしましたが、多大な人件費を回収できずに、Everyday health社に買収されています。

そして、Revolution Healthと入れ替わりに個人的にはベスト3入りしてきたなと思うメディアがDrugs.comです。メディアの強さだけであれば、世界最強の医療ヘルスケアメディア企業、WebMDグループにまったく負けていません。

WebMDとEveryday Healthがコンテンツを日々更新するフロー型の情報提供に強みをおいているのに対し、Drugs.comは医薬品データベースメディアとしてストック型の情報提供に強みを持っています。

立ち位置としては、先日ご紹介したメドレー オンライン病気事典と非常に近く、彼らもかなりベンチマークしているのではないでしょうか?

世界で2番目にトラフィックの多い医療・ヘルスケアサイト

Drugs.comも実は歴史は深く、運営開始は、2001年。ほぼMedscapeと同様ですね。

運営主体のDrugsite Trustは、ニュージーランドの会社ですが、サイト自体はUSのオーディエンス向けと宣言しています。

Drugsite Trustは、2人の薬剤師によって運営されているとありますが、情報量の多さや、その優れた構造、垣間見られるビジネスモデルの深化などから、裏にかなり大きな組織がついているのではないかと想定されます。

ミッションでは、“to empower patients with the knowledge to better manage their own healthcare and to improve consumer safety by assisting in the reduction of medication errors.”
とありますので、患者向けに作られたようですが、現在は、サイトにログインした医療従事者向けに製薬会社からの広告配信なども行っているようです。

世界的に、医療用医薬品の非医療従事者向けの直接広告は禁止されているため、ログインした後の画面やメールにて、広告が可能というわけです。実際に、「特定の製薬会社とは提携していないが、広告は貰っている」と明確に記載があります。

なおDrugs.comのグローバルのWebサイトランクは1,278位(2016年2月現在)、アメリカ国内では508位となっています。

このランクを主要のメディアと比較すると、
WebMD グローバル319位(アメリカ99位)
Medscape グローバル2,047位(アメリカ821位 )
RXlist グローバル6,994位(アメリカ1,898位 )
Everyday Health グローバル2,570位 (アメリカ855位)
MEDPAGE TODAY グローバル7,317位(アメリカ2,498位)

と、同じく医薬品データベースを提供するRXlistを大きく引き離しており、世界の医療・ヘルスケアメディアの中では、WebMDに次いで2番目にトラフィックが多いサイトと想定されています。

なおm3.comはグローバル4,538位(日本311位)。すごいなあ・・・日本だけがマーケットで、RXlistやMEDPAGE TODAYとか抜いてるじゃないすか・・・。

Webメディア×英語という強み

さて、Drugs.comの想定トラフィックについて考えてみましょう。

同サイトのAboutページにはvisit数が1日120万人++とあります。サービスモデル的にリスティングなどの有料広告はやっていないと想定される中で、自然集客だけでこれだけのvisit数はさすが、としかいいようがありません。

Alexaによると、PV/セッションは2.3とありますので、最低でも1日のPVは276万、月間で8,280万PVはありそうです。

製薬会社からの収益は不明ですが、アドセンスなどの売上を推計すると、仮にGoogleやYahooのアドによるCPMが300円(アメリカの平均CPMとほぼ同等)だったとすると、月間収入は、2,484万円。年間で約3億円となるようです。

さて、医薬品データベースという、比較的ニッチな情報サイトでもこれだけトラフィックが稼げる理由のひとつに、英語という言語の強みがあります。要は、英語圏のすべてがビジネスの対象になるということ。マーケットのでかさが、けた違いです。

英語話者の人口が世界で約17.5億人と言われますので、単純に見積もっても日本の15倍の検索ボリュームとなるわけです。
実際に、僕がいるシンガポールですら、どんな医薬品でGoogle検索してもDrugs.comが上位3位以内に必ず出てくるという印象です。領域としては、近しい事業をやっているので、彼らが出てくるたびに正直イラつきます

このように、英語の凄さはシンガポールでビジネスをやっていると実感します。比較的遠隔マーケットでも参入が容易なWebビジネスは日本語だけではもったいないなと思います。

Drugs.comのSEO集客

なおAlexaによると流入経路の約6割はGoogle.com経由のSEO流入となっています。
SEOの主な流入先ページは、もちろん各医薬品のページです。なお掲載医薬品数は24,000品目ということなので、アメリカの承認薬をほぼ全て網羅しているといえるでしょう。インデックス数は769,000ページとなっています。

とはいえ、先日ご紹介したメドレーが立ち上げ半年で300,000インデックスを超えていることを考えれば、このあたりが医薬品情報だけにこだわっている限界でしょうか。(メドレーが凄すぎるという話もありますが。なおさっき再度メドレーのインデックス数調べてみたら、約1か月間でまた30,000インデックス増えてました・・・化け物や・・・)

メインである医薬品ページは、狙っている検索キーワードごとに、複数ページに分解されています。
drugs.com 医薬品

主なところでは、1医薬品(ブランド・ジェネリックそれぞれ別ページである)に紐づく形で、Overview(基本情報)、Side Effects(副作用)、Dosage(用法、用量) Interactions(飲み合わせ)、Professional(医療従事者向けの処方ガイド)、Pregnancy and Breastfeeding Warnings(妊娠中と授乳中の注意点)、Prices and Coupons (価格と割引クーポン!)というページが紐づき、非常に網羅的になっています。

なおそれぞれの検索ボリュームでいうと、単体の薬名が圧倒的で、その10%前後が「薬名+Side effects」、5%程度が「薬名+Dosage」となっていることが多いようです。
参考検索ボリューム:Aricept単体74,000、Aricept+Side effects8,100、Aricept+Dosage1,600

検索ワードNo.1はPill Identifierはなんと月間150万検索

ちなみにDrugs.comへの一番検索流入が多いクエリは「Pill Identifier」とのこと。なんと、Googleキーワードプランナーによるの「Pill Identifier」の検索数は月間150万・・・ビッグワードを超えた、メガワードですね。

Pill Identifierとは、「ある日、子供の部屋で見知らぬ錠剤を見つけた親」がこの薬は何か、というのを調べるという機能です。その薬の外見的特徴を選択していくと薬名がわかるわけですね。やばい薬だったらどうしよう、というニーズ確かにかなりありそうですが、それを検索ワードとしてここまで根付かせたDrugs.comは偉大ですね。
Pill Identifierはこちら(外部サイトにリンクします)

これができてしまうってことは、薬の外見的特徴をデータベースに入れ分類してるってことですから、なかなか人力感があって個人的には好みです。

さてこのようにSEOで圧倒的な強さを持つDrugs.comですが、弱点があるとしたら、情報が統合されていないことでしょうか。ここはメドレーのときにも書きましたが医薬品情報はあくまで欲しい情報の断片に過ぎない(特に一般消費者向けにおいては。医療従事者であれば別)、と考えています。ユーザー視点としては、解決したい疾患があってこその医薬品情報である、ということを深く考えたいものです。

Drugs.comを通して考える、情報インフラの競争優位とは

最後に、一番大事なことを。
医薬品に限らず、こういった膨大な情報量を持つデータベースサイトを作る方法はいくつかありますが、本当に強いメディアは、その情報を集め、整理し、更新し続けるプロセスそれ自体が、競争優位のポイントとなっているケースが多いと考えています。

一度集めた情報も日々古びていく中で、いかに外からわかりにくく、わかられても真似されにくい方法で、その情報収集と更新を効率的に実現するか、が競争優位のひとつの原点となるでしょう。外から見たときに、一見非効率的なプロセスであればあるほど、真似されにくく、強い競争優位が作れます。

Drugs.comの場合は、提携という手段をとっています。
そう、Drugs.comはアメリカFDA(Food and Drug Administration / アメリカ食品医薬品局)という医薬品業界で最も権威的な組織と提携を実現させています。
http://www.worldpharmanews.com/fda/1243-fda-announces-collaboration-with-drugscom

この提携により、FDAが新しい副作用を追加したり、新薬を承認すると、ほぼ自動的にDrugs.comに情報が流れるという訳です。アメリカで一番最初に承認や副作用追加を行う大元の組織であるFDAと組まれたら、まず情報スピードで他社が勝てるわけがありません。

医薬品データベースに掲載するコンテンツそのものは、本質的に違いがありませんから、他のメディアが医薬品情報を掲載しても、Googleから重複コンテンツと見なされてしまいます。

FDAが他のメディアと簡単に提携するとも思えませんので、今後APIでも作られない限り、この情報収集方法それ自体がDrugs.comの最大の競争優位となっているわけです。

こういった、情報整理における最適なプロセスは、事業ドメイン、国や地域、事業ステージなど多くの要因によって変化します。

たとえばDrugs.comとFDAの提携はアメリカだから実現したのでしょう。日本で、厚労省が民間営利企業と一社独占して情報提供をする、なんてことはまず難しいでしょう。
価値のあると判断したものには協力を惜しまず一緒に作っていく。これがアメリカの偉大さでしょう。

これが、メドレーであれば医師にポイントを巻き、医師CGMを作り上げたことですし、Trip Advisorやじげんのように既に競争激化した領域で、バーチカルサイトを並べ比較させる「プラットフォーム・オン・プラットフォーム」という方法もあります。

病院など運営にあたって登録が必要な施設リストを作っている会社の中には、行政サイトをクロールして情報収集するケースも多いですし、その極地が「チラシル」のような人力クロールでしょう。

じゃらんや楽天のように、強い集客プラットフォームと使いやすい管理画面を提供することでクライアント自身に常に最新情報を更新させることもECサイトでは往々にして行われています。

私たちが本気で情報インフラでビジネスをやっていきたいのであれば、ただ単にキーワードプランナーで検索数を調べて、キーワードターゲットを選定して、コンテンツ追加していくのでは全く物足りません。

出来る限り外からはわかりにくく、わかっても真似をされにくいような、つまりそれ自体が競争優位となる情報収集・整理方法を、日々考え続けていかなければなりません。そうでなければ気づかぬうちに競合に忍び寄られ抜き去られてしまうことでしょう。

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